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エッセイその6-1 ライブとCD その1



アコースティック・ギターの魅力が生音にあるのは,みんなが同意するところでしょう。

( ̄Λ ̄)ゞ んむっ



しかし,実際のところギターのコンサートへ行った時に聴く音はギターの生音でしょうか。



完全な生音のライブというのもクラッシック系の人ではあります。 小ホールでみんながシーンと聞いているような場合にはできないこともありません。

でも,私がこれまで聞いたアコギライブはすべて,スピーカーから出るギターの音でした。 きっと,皆さんもほぼ同じだと思います。


スティール弦でも,70年代までは完全アコースティックの時代もありました。


しかし,マーチン・シンプソンが以前にインタビューで述べていましたが,「自分も生音派だったのだが,ライブの後感動したという人が前2列の人だけだったので,ピックアップを使うようにした。」というのです。


イサトさんも80年代からピックアップも含めたギターサウンドを研究していて,それも演奏表現の一部であるというコンセプトで,いわばエレクトリック・アコースティックサウンドを追求していました。



その結果分かったことがあります。

感動は音量と関係があるのです。

音量が小さいと聴衆は感動できないのです。


演奏が例えどんなに優れたものでも,音量が小さいと聴衆に感動が伝わらない場合があるのです。 だからどうしても増幅してスピーカーから出す必要が生じます。


この辺はギターのどこにでも持ち運べるという性格の反面で,音量には限界があるという点でもありますね。


それで,ピックアップなのですが,生音とは違う音になります。 それぞれにピックアップの特徴があります。


そのためについにサウンドサンプルCDを作りました。 ピックアップに関心がある人のために,そのサウンドサンプルは音だけではなく,ピックアップの講座をかねていて,聞くだけでかなりのことを理解できるように作りました。

興味深いことに,すでにそのCDを聞いた耳がいい人たちの感想で共通したものがあります。それは・・・。


「ピックアップの音としてすばらしいとは思いますが,やはり,マイク録りの生音が一番良いと思いました。新岡先生には悪いのですが・・・。」というのです。



「(≧ロ≦) アイター・・・


やはり,アコギの魅力は生音にあり。これは本当ですね。



音量を上げるということだけを見れば,マイク録りもいいのかもと思われますが,ここでもう一つの大切な点に気が付けば,ワンランクアップだと思います。


それが,ライブとCDの違いです。



実はライブとCDで求められている音は違うという点です。



多くの人はCDに,ハイクオリティーで,ギターそのものの音色を最大限に引き出したものを求めるでしょう。

皆さんもCDは部屋のオーディオか車のオーディオで聞くと思いますが,普通のオーディオというのはハウリングなどの過大入力の心配はなく,最大音量にすることもなく,比較的狭い部屋で聞くことを前提に,ノイズもなく上品に繊細に作ってあります。


でも,ライブは野外とか過酷な環境で,持ち運びが乱雑で,ハウリングさせて音だしをしてノッチフィルターをチェックするという過大入力の嵐で,ケーブルは長くて,アンプなどもブーンとうなって当たり前です。

ツイーターから残留ノイズも普通にあります。 会場が広くて,音量が大きければ,PAのノイズも,うなりも何の問題もありません。


このようにライブ用PAと家庭用のオーディオとは音を出す点では同じですが,全く考え方が違うものです。



それでは,ライブ会場で録音のいいCDを流せばそれは最も良い音として聴衆は感じるだろうか?という点です。



どう思いますか



確かにCDとして音はいいかもしれませんが,ライブで求められるのは,オーディオ的にいい音というよりも,もっとリアルな音,立体的な音,線の太い輪郭のハッキリした音だと思います。

つまり,実際にライブで聴衆に感動を与える音とCDの録音で感動を与える音には違いがあるという事なのです。


アイドルのCDを作る場合,実力派アーティストとは違う音作りをします。 10代のファンが多いアイドルの場合はラジカセで音をチェックしてどんな音になるかを聞いて,最終的にドンシャリな音にしたりします。


それと同じで,最終的に出す装置や環境で目指す音は変わってきます。 サンプルCDというのはオーディオで聞く状態ですので,CDプレイヤーで再生するという状態では確かにマイク録りがいちばんでしょう。


でも,それはライブで感動を与える音とはまた違うものだということなんです。


昔,東京で見た,イサトさんのライブでギターらしからぬ重低音をうねらせながら,ボディを叩いて,深いリバーブの余韻が響く時には,大きく感動しました。

そして,それぞれが目指す演奏スタイルもかなり,このライブの音作りに関係があります。

98年3月に東京の南青山でプレストン・リード,エド・ガーハード,中川イサト,小松原俊の日米の4人が繰り広げるジャパンツアー初日を見ました。プレス関係者が大勢来ていて,一人1時間ほど弾くいて,合計4時間以上に及ぶすごいライブでした。

その時,イサトさんも小松原さんもMファクトリーです。

プレストンはロングネックのオベーションで,オーバードライブがかかっているのかと思うほどの,ピークでは歪みがきいた音でした。


でも,私が最も感動したのはエド・ガーハードの音です。


フィッシュマン・マトリックスをメインにしたと思われるピエゾの音ですが,彼のアルペジオ的な演奏には非常にマッチしていて,最後の

「ウォーター・イズ・ワイド」には   (ノ_・、)   が出ました。


ライブで感動を与える音とは必ずしもCDに入っているようなオーディオ的にいい音とは違うと感じるわけなのです。


それで,この話を聞いた上で聞いて欲しいのが,テイラーESの話です。

ピックアップお宅を自称する私が驚いた,感動した音です。

さすがボブと言いたくなるほどの音でした。(親しげですね)



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