ピックガードを研究する

最終更新: 9月16日

Ayersギターのピックガードについて数ヶ月前から台湾オフィスのマネージャー、ベトナム工場のデザイナーと共に、私も日本の代理店として意見を出して検討してきました。


テイラーをはじめ多くのメーカーはピックガードまで含めてギターのデザインをしています。それに対して多くの手工ギターは、フィンガー・スタイルのユーザーが多いためか、ピックガードなしが多いように思います。


フォルヒは透明なピックガードが付いていて、ほとんど目立ちません。これも良い方法だと思います。ヨーロッパ系のメーカーにはこの方法が見られます。そしてサウンド・ホールのリングに合わせて貼るスタイルです。


私もこれが最も良いと思います。なぜならギターのボディが D , SJ, A , OM L-00 とあればピックガードのロゼッタリング・サイズはデザイン上同じにはならないからです。ボディ幅に合わせてより最も美しく見えるロゼッタのサイズを選択できるという意味では透明は良いです。



でも、一部のユーザー様にはもっと高級ピックガードを付けて自分の Ayers ギターの見た目をさらにグレードアップしたいという願いもあるのです。高級ピック・ガードの代表は Tor-tis トーチスといういわゆる人工鼈甲(べっこう)ですね。


しかもその制作者は有名なギター製作家 ジョン・グレーベン なのです。グレーベンが3年をかけて開発したと言われるピックガードなのです。


70-80USDという高級ピック・ガードです。これがドレッド用 (正確にはD28 Oversize)


こちらはOM用。サイズが可愛い。(正確にはOM28用)



これはスカッドのパーツで、傷防止シートがあるので艶消しに見えますが、はがすと艶ありです。薄いです。

比べるとトーチスの存在感は圧倒的です。厚みが1.5mmもあり、3Dの形に整形されているのでカーブの部分に艶が出ます。高級感あります。


自分のギターに重ねてみます。

ベイクド・アディロンの色と相まっていい感じですね。


スカッドはどうでしょうか。

遠くから見たら同じに見えるのかもしれませんが、近距離では圧倒的に違います。


ちなみにピック・ガードなしのドレッドはどうでしょうか?

なんだか少しだけ物足りないような、締まりがないように感じるかもしれません。トップの面積が広いから?かもしれません。


Ayers がメーカーとして独自のピックガードを作るとしても、この薄いスカッドに近いものしか提供出来ないと思われます。そうすると最も良いカスタマー・サービスは独自に薄いピックガードを作ってギターに添付する方法が良いか? それともトーチスに対応するサイズでロゼッタを作るのが良いか? と考えます。


多くのギターメーカーのロゼッタはすでに寸法が決まっているので、トーチスを買って貼る時にぴったり合うかどうかはわかりません。


ちなみにAyers のSJ ボディにトーチスを載せてみます。


SJはボディのくびれがあるので、トーチスOMサイズがマッチするように思います。

スカッドのドレッド用。パーフリングに近づいてしまう。


トーチスのドレッド用。 パーフリングにかぶってしまう。

 

なんだかトーチスのドレッド用はかなり大きいですね。


幅が104mm 位あります。


トーチスの線と比べるとスカッドのサイズは標準的で小さいですね。約96mm


トーチスが大きいのは、これこそオーバー・サイズのピックガードだからです。

元々マーチンの70年代塗り込みピックガードが縮んで、トップの引っ張り割れ、いわゆるマーチン・クラックを起こすので、貼り直す必要があります。


ちなみに70年代マーチンの塗り込みピックガードを剥がすとトップは塗装がされていません。ギターは塗装なしの状態では音が悪いのです。高音が出なくなります。塗装はよく薄い方が良いと言いますが、塗装がゼロではギターの音にはならないのです。薄くても塗装が必要なのです。


なので、塗り込みピックガードを剥がしたら薄くですが、未塗装の部分に、ラッカー塗料を塗ってからピックガードを貼る方が音質は良くなります。(実験済み)


話を戻すと、塗り込みを剥がすと、剥がしたピックガード周りの部分がどうしてもキレイになりません。そこでアメリカンな合理的発想はオーバー・サイズのピックガードで隠してしまえという方法です。


でも、ここに罠があるわけです。トーチスのOMサイズ・ピックガードのリングサイズは126mmの直径なのです。所がオーバー・サイズはその以前の貼り位置を隠すためにあるので、上の写真のようにワンサイズ大きいのです。そうすると直径サイズが違うのです。


トーチスのD28用オーバーサイズは124mmなのです。それでもマーチンD28のようにロゼッタ・デザインが幾つものリングが重なり合っているタイプは問題ないのです。どれかのリングには大体合うので。


この写真のようにリングが沢山あるロゼッタは心配要らないのです。必ずどこかのリングにピックガードのリングが一致すると思います。


それに、この手のロゼッタはアバロンの用に光っている訳ではないので、ピックガードが少し上から重なったとしても問題ありません。


こういうロゼッタ・デザインなら126mmでも124mmでも付けられます。


でも最大直径が126mmアバロンのロゼッタが入っている場合、そこに124mmの直径のピックガードを貼ると、半径で1mmほどアバロンにピックガードが重なってしまいます。


それはやはりもったいない。恐らく日本で売られているトーチスのD28用がオーバーサイズだとしたら、ちょっと注意が必要です。なんと言っても販売サイトには詳細がなく、アマゾンの評価もサイズを買い間違えたという人の評価もあるのです。


もしトーチスD28用オーバーサイズをAyers カスタムに使う前提ならギターを作る段階で124mm直径のアバロンに変更しないといけません。


市販されているピックガードをアマゾンや通販で買えるだけ買ってみました。興味深いのはどこから買っても結局中国製の同じものが来るのです。その標準サイズです。



いわゆる標準サイズのピックガードとは。


長さ175mm, 幅96mm, リング直径126mmなのです。


でも前述のように透明ピックガードはリングにぴったり合っていても、いなくても透明なので見た目に影響が大差ないわけですので、好きな位置に貼っても良いという考えもあります。


ただ、せっかくAyersのインレイ部門が手作業で入れた、アバロンが光っているのに、ピックガードで覆われて、一部だけ光らないなら、リングの直径を126mmで統一して、アバロンには重ねない。というのがAyers ギターのメーカーとしての結論になります。


今後作られるギターのロゼッタはどの種類の素材を使っても126mm の位置に中間ロゼッタの外周が来るはずです。それにより、ピックガードを貼っても、アバロン・ロゼッタがハッキリ見えるようになります。


上の写真はAボディと標準サイズピックガード。元々透明だから、ロゼッタにかぶっても、ボディの外側パーフリングに近づいてもそれほど問題はないと思われます。OMは外周との距離がもっと近くなると思われますが、大丈夫でしょう。


そして、今後Ayers の基準が126mm になればOM 28用のトーチスは問題なく使える事になります。


このような雰囲気ですね。なので、オーバーサイズのトーチスはドレッド以外には付かないと思うので、SJ , A , OM の方はトーチスOM用を選択するのが良いと思います。


岸部さんもSJボディにOMピックガードの雰囲気ですね。


トーチスに関してその美しさは認めるのですが、詳細な情報が余りにも足りないのです。ネットで見ると3種類あります。D28用、D45用、OM28用がありますが、サイズに関してはどこにも記載がないのです。


アメリカのサイトを見てもサイズに関して記載はないのです。最低限サイズと、リングの直径は書いて欲しい所です。アマゾンでトーチスに星一つが付いていましたが、サイズの記載がないためD45用をが買ってしまった人がサイズが全く合わなかったから付けた評価でした。


この辺のアバウトさがアメリカらしいのかもしれません。


そうすると唯一の問題はAyers でドレッドをオーダーされて、オーバーサイズのトーチスを貼るという方です。


この場合はオーダー前に教えてもらい、ロゼッタを124mmに調整する必要があります。


この厚みのあるトーチスをギターに貼ると音はどうなるのでしょうか?やはり高音は少し影響を受けるでしょうか?これは自分のギターで実験するしかありません。


皆様のために実際にトーチスを貼ってみました。貼り方ですが、最初にこのように位置極めします。そして、ノリがはみ出している部分を処理します。



何度かチェックして同じ場所に落ちる事を確認したら、トップの貼る所をもう一度掃除して貼り付けます。


高級ピックガードといえど、両面テープのこういうはみ出しがあります。これを上手にカットします。もしも、ノリの一部がピックガードに付いてべたべたが広がった場合はテレピン油が役に立ちます。


トーチスが台紙の上にセロテープで留めてあるので、そのノリもピックガードに残っています。これもテレピンで落とせます。


英語では Turpentine というので、テレピンとはかなり発音がちがう気がします。これもブラッドレイ先生から教わった事なのですが、最初は何を言っているのか全くわからなかったのも良い思い出。


油絵の画材店で購入できます。両面テープのねばねば剥がしに使いますが、ギター内部のノリもこれで処理すると油が残らず揮発して色は元の木の色になりますので、良いです。やはりギターでは有機系は石油系よりもいいです。


どうでしょう。この艶感。美しいです。ピックガードの下からトップの木目が透けて見えるとこれまたいいのです。トーチスにはもっと濃い色も薄い色もあります。


トーチスのバリエーション


ちなみに1弦ははずしておきます。上からゆっくり落とすので。

最後にピックガードの位置決めに影響する要素をお知らせします。


1弦のラインと大きくずれると気になる人がいるかもしれません。


二つ目はボディの端にあるパーフリングとの距離感は見た目に影響します。

この2つをポイントにして位置決めをしたらうまく行くと思います。


本日の結論。


1 Ayers のロゼッタのアバロンは今後126mmになり、市販のほとんどのピックガードが選択できますし、さらにトーチスのOMサイズが使用できます。


2 Ayers でドレッドをカスタムオーダーされる人で、トーチスD28用オーバーサイズを使用したい場合、オーダー時点で先に教えてもらい、ロゼッタのアバロンを124mmに調整する。これでアバロンはハッキリ見えてピックガードも美しいのです。


たかがピックガード、されどピックガード。奥が深い。


追記


音の事を書くのを忘れていました。1.5mmの厚みのあるものをトップに貼るのですから、当然音に影響があります。特に貼ったその時は音が変わったと感じます。 でも、1日くらいたつとギターの動きにピックガードが慣れるのか音は回復して来ます。


特に倍音が入ったギターは回復してくる力も強いので、ピックガードによる音質劣化はそれほど大きいとは思いません。もしここが気になる方は0.5mm前後の薄めのピックガード も選択肢だと思います。透明のピックガードが約0.3-0.5mm位でしたので、これも選択肢ですね。











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