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修理の依頼は工場が良いか?リペア工房が良いか?

更新日:2020年6月24日

時々私と同じような種類の人がいるもので、あるマニアの方がお金をかけても良いからマーチンの修理をマーチン本社に依頼して、結果を見てみたいというのです。


彼のギターはこちら

普通のクラプトンモデルではなく、OOO-45 EC クロスロード マダガスカル・ローズなのです。トップがアディロンで、サイドバックがマダガスカル・ローズ。

マーチンの高級品45シリーズでも10年も経つとやはりバインディングが縮んでウエストの辺りが外れてしまいます。また、マダガスカルのような硬い材料は幾らか割れが発生する場合もあります。それらのリペアに加えて・・・


ネックアングルがわずかに起き気味なので、ネックリセットもしたい。指板のわずかなねじれが気になるので、ついでにマーチンにネックを作り直してもらうという稀に見る依頼なのです。

( ゚д゚) Oh ネックがもう一つある。


輸送も厳重でDHLで来ますが、箱は二重になっていました。


かかった時間と費用がすごいのです。約半年間、かかった費用は送料も入れると約50万円です。なかなかできないオーダーです。安いカスタムギターが作れてしまう。


その修理の仕上がりを見てみましょう。

ウエスト部分のバインディング届いてない感じ? あっためて引っ張ったけどこれ以上繋がらないから黒のフィラー(目止め粉)入れてOKにした感じ?


反対側はもっとハッキリと。


お尻の部分は?

やはり縮んだバインディングを同じ位置に使うという事に無理がありますよね。すでに長さが足りないのですから。日本人のリペアマンのブログをみればもっと高度なリペアをされる方がおられます。足りないバインディングを目立たない場所に別の素材で足して色を合わせるのです。



サドルもフラットではありませんので、音が甘すぎます。ネックの反り具合は0.175mm位のUP-Bow(順反り)。1フレットの弦高は6弦が0.65mm 1弦が0.45mm 位で私の好きな数字にかなり近いですね。


これは本当にアディロンか?と思うほど目が細かいのです。



ブリッジ・インレイも特徴があります。



ハード・ケースにはマーチンロゴが刺繍で入っていて、高級感があります。


音は素晴らしいです。マーチンの45シリーズにしかない深い倍音があります。28シリーズにはこの倍音はありません。弦を弾いたあと28系だと基音が自然に減衰するだけです。40シリーズ、42にもあり、45だとハッキリ倍音が感じられます。弦を弾いて1秒くらいすると音質に高音の倍音が加わったように感じられます。


倍音が入ったギターはリードギターを弾くとその違いは顕著ですね。リバーブ 感が素晴らしいです。それで倍音のないギターはピックアップとリバーブで補いたくなるんですね。


迷ったら縦ロゴ。42と45で迷ったら45ですね。


ギターリペアとギター製作は似ているようでいて、異なる面があります。ネックを作り直すというのであれば製作した工場が良いと思います。でも、すでに縮んだバインディングの修理となると新しく貼り直すのではないので、リペア専門家の経験と技術が必要だと思います。


それと修理技術にはある程度の細やかさが必要で、日本人に向いているように思います。なので修理の内容によって出す先を変えるのが良いように思います。


Ayersではネックの作り直しも出来ます。数年後に指板が万が一捻れたり変形して、指板修正だけで解決しない場合にも安心です。でも、普通にフレット擦り合わせなどの場合は逆に日本でその面で有名な工房に依頼する方が総合的には良いと思います。


例えば、北海道のShinagawa ギターのように指板の角を少しスキャロップ気味に仕上げて、フレットの端も山も美しく仕上げる工房に依頼できたら、オリジナルの状態よりもさらに弾きやすさが向上したギターになります。角が取れたギターは握りやすく非常に好感触です。


工場製のギターをさらにチューンナップする面白さ、これもギターの楽しみの一つですね。


マーチン工場へ修理50万円の依頼。これはなかなか真似ができないギター実験室でした。













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