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エッセイその8 マーチンサウンドとPA向きサウンド


マーチンを弾いていると,やはり他にはない鳴りが何とも心地よくて,マーチンが何本も増えていく人の気持ちが少し分かりますね。 マーチンが最高のギターだという人は少なくありませんね。


(ノ^_^) ハイ!



マーチンサウンドをもう少し分析すると,箱鳴り感が特徴だと思います。ボディがしっかり共振しています。


私の好きなビンテージシリーズのマーチンは特にそうですね。 HD-28V,OM-28V,OOO-28EC,D-18Vなどはそうです。

弦高を下げすぎず,ライトゲージなど適切な弦にして(それ以下の細いものはイマイチ)弾くとすばらしい箱鳴りがあります。



ところが,アメリカでNo1ギターはテイラーなのです。



ついにマーチンは抜かれて今やアメリカ市場はテイラーの時代なのです。まさに,一リペアマンからマーチンを超えるというアメリカンドリームを成し遂げた,ボブ・テイラーなのです。


何がこの違い生じさせたのでしょうか。 私なりの分析です・・・・。





皆さんはこの中川イサトの「太陽風」というアルバムと「Solar Wind」というアルバムを聞き比べた事があるでしょうか。


太陽風は94年の作品で,「びんろうじゅの木陰」,「風の谷」などイサトファンが好む曲が入っています。


使用ギターはソモギで,Mファクトリーのピックアップからレキシコンリバーブを通して自宅でのDATによるライン録音です。たぶん。

そして,2002年に台湾版として出されたのが,全く同じ曲を同じように演奏して同じように録音した「Solar Wind」なのです。 (定価の600元っていくらなんでしょう。)


使ったギターは日本人初のマーチンのシグネチャーモデルになったOOO-42カッタウェイ 中川イサトモデルです。 値段はほぼ100万ですが,問題はその音です。



CDを聞き比べてみましょう。

♪ チャララララーン


ソモギの方は低音から高音までレンジが広く,隙のないバランスです。キレイに響き渡ります。 ピックアップを通すとそのギターの元々のバランスが出てきますね。



マーチンのイサトモデルはどうでしょうか。

♪ ポヤヤヤーン


音が丸いのです。

( ̄ヘ ̄;)ウーン


角がないと言えば聞こえはいいのですが,はっきり言えば物足りないのです。


ライブではリバーブも使いますので,箱なりが多すぎるギターは音色が甘くなるのも大きな原因でしょうね。

ギターソロで演奏し1曲になった時に,マーチンサウンドでは何か物足りないこともあるのです。 高音が足りなくてモコモコしている感じですね。


押尾ライブでもマーチンGEよりもグレーベンの方がメロディーがきれいに出ていた印象がありました。

もちろんギター自体が新しくて弾き込んでもっと切れ味が出てくるという点もあるのでしょうが,基本的な音色がマイルドで箱鳴りが強いマーチン系の箱なりがあるギターはラインよりも生音がいいですよね。


でも,ギターはピアノなどに比べると低音寄りの楽器だと感じることがあります。


そうなんです。実はギターそのものが低音寄りの楽器だったのです。 これはギターの歴史も関係しているかも知れません。


19世紀の終わりごろの生活には,レコードも,映画もありませんでした。それはすべて20世紀のものです。

その時代は生演奏が娯楽だったことでしょう。 手軽に楽しめる楽器にはマンドリン,バンジョー,ギターなど弦楽器がありました。


でも,歌の伴奏として最も適していたのは,やはりギターです。 スティール弦のアコースティックギターも元々歌の伴奏楽器として発展してきました。


1916年にはドレッドノートが誕生します。この時代は間違いなく鉄弦は歌の伴奏楽器でした。

マーチンD-45ももちろんそうです。 D-45は1933年のシンギング・カウボーイ,ジーン・オートリーのモデルに始まるといわれています。


歌の伴奏という事は,歌を邪魔しないような脇役に徹する必要がありますね。それで実際ギターの周波数は低いんです。

ト音記号の楽譜の下のドがありますよね。(下第一線のドです。) ピアノではこれが真ん中のドになります。(鍵穴の近くのドです。)

これをギターでは,普通は5弦3フレットのドにします。 が,本当は周波数的に考えると2弦1フレットのドになります。

(⌒^⌒)b なるほど


ピアノの真ん中のドよりも一オクターブ低い所で,ギターのドレミファ・・・はできているのです。


つまり,ギターは音色はキラキラとしていますが,周波数的には一オクターブ低い楽器なのです。


実はこれが,弾き語りにマッチするのです。


歌の周波数帯とギターの周波数帯がかぶらないんです。 歌のレンジを入れると3オクターブに近いレンジの広さになるので,ギターの弾き語りは非常にバランスがいいんですね。

というわけでギターそのものが低音寄りの楽器という事は,そのギターをきっちり箱鳴りさせるとどうなるかということです。

低音寄りの箱鳴りが出てくるはずです。 これは正しくきっちりと鳴るように作っている証拠ですね。


弾き語りはもちろんこの低音寄りでいいわけです。


さらに,ブルーグラスやカントリーなどのフラットピッキングではこの低音よりのおかげで音色の太さが出ます。 これがまた,ストロークの伴奏と一緒に演奏する時に重要だと思います。

音色が細くならないのは,生音を重視するギターの場合は重要なポイントですよね。

箱なりがないギターをアンサンブルで使うとシャカシャカしか聞こえないこともありますよ。

(アンプラグドでクラプトンのリードソロを聞いても伴奏に埋もれることなく単音が聞き取れるんですね。)


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ラインか生音かという問題だけではなくて,リードギターと伴奏かソロギターか,奏法の違いもギターの選択に影響しますね。


ソロで演奏すると,一本のギターからメロディーもハーモニーもベースもすべてが出てくる必要があります。

そうなると,単純に箱鳴りがあるギターが良いというのではなく,もっと高音の切れ味から,低音の厚みまで幅広いレンジで出てくる方が良いということになります。。

それで,ソロギター弾きはドレッドよりもSJ(セミジャンボ,ジャンボボディを小さくしたもの)だったり,GA(グランドオーディトリアム,OMボディを少し大きくしたもの)の方が,低音も高音も出てレンジが広く感じたりするので,それを選ぶ人が多いですね。


このSJ系のボディがマーチンにはあまりないのです。 伝統的なドレッド,OMが主流なのです。


OOOOモデルのM-38とかJ-40という機種もないわけではないのですが,箱が鳴り過ぎる印象もないわけではありません。

OMでも本当にいいものは,低音が十分に出ますので,バランスが完成していると思えるくらいいい音がします。

プリウォーのOOO-42のクラプトンがアンプラグドで使った物のシリアル一番違いというものを弾いたことがありますが,見事なバランスで何かを足す必要はないと思いました。


でも,新品のOOOなどを弾くと箱鳴りや低音が物足りないと思う人もいるかもしれませんね。


さらに,ライブのラインの音を考えると大切な点がまたあります。


ライブでPAから音を出す場合には,この低音寄りの箱鳴りがあるギターとシャキーンと高音まで鳴るギターとどっちがいい音としてスピーカーから出てくるかという点です。

ニコピンのようにマグとブレンドでピックアップから音を出す場合は,低音のかなりの部分はマグネチックが作り出しますし,高音はピエゾのコンタクトでトップの鳴りを拾いますので,会場や環境によってバランスよく再現できます。

ピックアップ自体が弦鳴りと箱鳴りをもっていて,ブレンドできるわけですから。

ピエゾの得意は高音側のきれいなところにあります。ピエゾに低音の圧力をかけるといやな音になります。 それで,一般的なインブリッジピエゾの場合は確実に高音寄りのギターの方がピックアップの音はいい音になったりしますね。


タカミネとかエレアコで最初から箱があまり鳴らない方がラインの音が良かったりしますよね。 ピエゾにはあまり低音の圧力をかけるのは良くないんです。

低音に寄った箱鳴りよりも,少し高音の切れ味がある音の方がPAから出てきた音がきれいに聞こえるんです。 Kヤイリなどもこの手の音を狙っているような気がしますよ。


ライブではリバーブも使いますので,箱なりが多すぎるギターは音色が甘くなるのも大きな原因でしょうね。


ピックアップの音が良いといわれるギターの多くは低音の箱鳴りよりも高音の切れ味を中心に音作りをしてよい結果になっていると思います。


マーチンの高級機種にインブリッジのピエゾを入れるとどうなるでしょうか。

クラプトンのライブDVD「ワン・モア・カー」のライブで彼がマーチンで弾く「ティアーズ・イン・ヘブン」を聴いてみて下さい。


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2008/5/14 追記 単純にマーチンだからとか箱が鳴るからというだけではなく,このクラプトンのプリプリ感はボディがトリプルオーサイズということもあると思います。

ボディが薄ければ,やはりピエゾの音のプリプリ感も強調されますね。 OMやOOOの音をラインで再現するのは結構難しいです。

ギブソン系のラインの音が意外にいいのは,ボディの厚さも関係があると思います。 これに関してはギター実験室のボディサイズによるラインの音の違いをご覧ください。



演奏はすばらしいのにこの音では悲しくて涙がでますよ。ティアーズインブリッジ。

(ノ_<。)うっうっうっ



話をもとに戻しましょう。



マーチンドレッドなどはその初めから伴奏楽器として出発しており,それがしっかり箱鳴りすればどうしても低音寄りの感じが否めません。

この音をキチンと再現するにはニコピンでないと難しいと思います。 一般的にピエゾのみでPAに入れるには,もっと箱が鳴り過ぎない高音寄りの方が有利というわけです。

それで,最近のD28などは高音が出るようになったといわれているのです。 つまり時代に合わせて設計を調整し,時代が高音を求めるのであればそういう音にしているのかもしれません。

(  ̄O ̄)ホー


それもあって,生音を求めるとビンテージシリーズがいいんです。 生音志向の場合はノーマルシリーズでは少しマーチンの魅力が薄いかもしれません。

生音を重視する場合には,マーチンの箱鳴り感はたしかに魅力があります。 でも,マーチンから高音を引き出せたらそれが最高のギターではないでしょうか。

(ノ°ο°)ノ オオオオ そうかもしれない。


私はまず,サドルを象牙に換えました。そして,ブリッジピンをタスクに換えました。これだけでも違いがはっきり分かります。


マホガニーのサイドバックですが,シャリーンと切れ味が出てきましたよ。


2008/5/14 追記 音色が甘すぎる原因はネックの元起きがあります。 ネックがまっすぐでも元から起きれば,大きな順反りと一緒ですね。

それで,音色が甘い時は他をいじる前にネックの起きもチェックしましょう。

そこまでの調整をしないで,対処療法的に直したい場合はタスクにしたりして,素材を変えるのもいいでしょうね。

さらにバナナムーン式にナットを削りこんで,巻き線の弦がナットの溝に埋まらないように,露出するようにして,倍音成分をキレイに引き出しました。

さらに弦はいつものフォスファーではなく,高音がより出るブラスの金色マーチン弦にします。


その音はどうでしょうか。

♪ シャリシャリーン

(ノ°ο°)ノ  オオオオ  


マーチンなのに高音もあります。でも,テイラーやヤイリほどの高音ではありませんね。

何かマーチンから高音を引き出す方法は他にあるでしょうか。

(ー'`ー;) ウーン



実はあります。



(・_☆) キラーン


箱を小さくすればいいんです。ドレッドのサイズだから高音が出ないんです。OMサイズにすればいいでしょう。

クラプトンモデルのサイズになればドレッドよりも高音が出ます。当然ですよね。ボディの厚みが違いますし。



でも,さらに高音を出す方法があるでしょうか。

実はあるんです。

(・_☆) キラーン



サイドバックの材質を硬質なものにすればいいんです。


マホよりはローズ,そして,さらに硬質のハカランダです。

(」゜ロ゜)」 ナント!!そういうことです。


それで,マーチンのハカランダというのはたしかに箱鳴りに加えて高音の切れ味を追求した究極のギターのひとつなのではないかと思われるのです。

何か微調整で小ざかしくいじるよりも,サイズや材質で高音が出る方が王道といった感じがしますよね。


するとやはり最後はハカランダになるのでしょうか。 マーチンD28GEはすごいギターと思いましたが,あれはさらにトップがアディロンダック・スプルースでした。

アディロンだと音量が上がると言います。アディロンとマホの組み合わせもいい音だと思った事があります。 アディロンダックもやはり素材として非常に優れたモノがあると思います。

D28GEはアディロンとハカランダの貴重品同士の組み合わせがいいのでしょうか。昔の黄金時代のマーチンは多くがこのアディロン&ハカランダだったようです。


もちろん当時でも高級品であったことは間違いないと思います。かえって現代の28GEの方が相対的には安いのかもしれません。 ハカランダのマーチンがあったらぜひ試奏してみてくださいね。


マーチンから調整で小賢しく高音を引き出すか,高音の出るマーチンを買うか。


難しい問題ですね。

( ̄~ ̄;)ウーン・・・



2008/5/14 追記 アディロンにハカランダの組み合わせはやはりいいですね。 アディロンにマホの組み合わせもいいですね。

1930年代はそれが標準だったわけですから。

アディロンとマホの30年代のマーチンを同じ30年代のハカランダマーチンとブラインドテストすると違いが分からないと言います。 ハカランダのレスポンスはマホに通じるものがありますね。

でも,切れ味はローズ。ちょっとサウンドは重い。 難しい問題ですね。

それでメイプル方向へ行く人の気持ちがわかります。



やはり,神田の有名店の店長も申していますように,「持つ一生ものと使う一生ものは違うと思いますね。」というのが結論かも知れません。 生音を楽しむためのギターもあり,ピックアップサウンドで人に聞かせるためのギターもあり。という2本立てが私の結論です。


マーチンを生音で楽しんで,ライブ用は最近の設計のギターにするというのも一つの方法ですね。


最近私はレッスンは箱なりの甘いメイプルマーチンですね。 そして,ライブ用は鳴り過ぎないラリヴィーですね。



ギターの評価をする時に,目的が混在しているのが現状だと思います。 使用目的から考えて評価するのが良いと思いますよ。


生音ギターと,ピックアップ向けギター。それぞれに価値がありますよね。 TaylorはまさにPA向きのサウンドを求めている市場をいち早く開拓し成功したと思います。

これはレコーディング用とライブ用と考えることもできるかもしれませんね。



でも,マーチンに合うピックアップはニコピンですね。

まだ,インブリッジピエゾでプリプリしている皆さんにはぜひともお勧めします。

(≧∇≦)b OK!