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ギターの音を分析する その1 倍音

個人の好みを超えてギターの音を判断する要素  


1 倍音が入っているか

2 揺れが入っているか

3 音量

4 バランス

5 ハーモニーの美しさ

6 遠達性

7 レスポンス

8 特別な個性


ドリアンという果物があります。最初あの強烈な匂いで食べられない人が多いのですが、昔広州で食べた焼きドリアン(塩味)に衝撃を受けました。臭みと甘みと僅かな塩味のバランスは強烈でした。あの美味しさはスゴい。少し臭いけど。あれはシンガポール系の中華料理店らしい。


もし普通の日本人にこう聞いてみます。

宮内庁御用達の静岡メロンと臭ーいドリアンとどちらが好きか?


きっと多くの人はメロンを選ぶと思うのです。もちろんギターも料理も自分の好き嫌いで判断して良いと思うのです。趣味の世界は普通そうです。


でもあなたが料理雑誌の記者でどちらのお店のレベルが上かを星1ー5でジャッジするという場合、これはまた別の話だと思うのです。それは単に味が自分の好みかどうかではなく、その料理の技術レベルや価値を判断するという事になります。


ギターは多くの場合、趣味の世界なので、勝ち負けはなく、自分が好きだからという理由で選んで全く正解だと思うのです。音より色とかデザインで選んでも良いと思います。でもギターの製造者や販売者になると好みだけではなく、そのギターの持つ技術レベルや価値を判断する必要が生じてきます。


外観を判断するのは簡単ですが、ギターの音を判断するのはやはり経験と知識が必要です。

それでは、好みを超えてギターの音を分析する要素をご紹介いたします。


でも普通の分析方法は別のサイトで製作家の説明しているものがありますので、ここでは私の観点で、説明いたします。


1 倍音が入っているか

2 揺れが入っているか

3 音量

4 バランス

5 ハーモニーの美しさ

6 遠達性

7 レスポンス

8 特別な個性

この中で一番わかりやすいのは、「音量」ですね。鳴る鳴らないという音量の大小は、大盛り自慢のレストランと一緒でわかりやすいです。でも味のレベルの上下を分析するのはもう少し難しい事ですね。


ギターの音質で一番大きな要素は倍音が入っているかだと思います。


それはギターというより楽器として一番重要な要素だと思います。

その解説の前に、ボディと素材の関係を簡単に説明しましょう。


ドレッドのボディは周波数全体が低音側に寄ります。男性がストロークして歌ってみるとそれがわかります。ギターの周波数は低音側に来て、ボーカルの周波数が上に来ます。なので男性ボーカルでドレッドを使うとギターも歌もハッキリ聞き取れます。


でも。逆に小さいボディのギターでストロークして男性が歌うと、ギターと歌の周波数が重なってしまい、ギターも歌も聞き取りにくくなります。






単純化するとギターはボディの形状で音の周波数レンジが決まり、トップとバックの素材で音質が決まります。もちろん塗装や設計その他の技術的な要素も音に変化をもたらします。それらはボディサイズと素材を逆転するほどの要素ではありません。



つまり、ボディサイズと素材という要素はその人の用途や好みの問題で、これはギターの音質レベルとは別の話ですね。つまり、D45でもOM45でも45シリーズの音がするのです。シトカの45もアディロンの45も、インディアンでもブラジリアンでも45なら45シリーズの倍音が豊かな音がします。


倍音が入ると楽器のレベルは次元が違うというほど音質が向上します。楽器としての表現力が、レベルが上がるのです。倍音入りとなしの差は大きいのです。


なので楽器造りで最も大きな要素は倍音が入っているかどうかだと言えます。でも、「倍音が入る」という表現がそもそもわかりにくいと言われるかも知れません。全てのギターはトップが鳴ればサイドもバックも共鳴しますので、必ず基音に対して倍音を発生させます。多くの場合は整数倍で倍音が発生すると思います。


でも、この現象と私が言う「倍音が入る」というのは少し違う意味なのです。普通のギター例えばD28などは弦を弾くとその音が変化せずに減衰して行きます。これは通常の共振なので倍音が入っているとは言いません。


それに対してD45もAyers のOTSも弦を弾くと約1秒後に2倍音がハッキリと聴こえて来ます。約2秒後には4倍音も聴こえて来ます。


倍音が入るとリバーブ感も向上します。これがまさにD45とD28の違いとも言えます。倍音入りのギターは弦を一本弾いても立体感があります。そしてボディが共振しているのが感じられます。1-2弦のプレーン弦を弾いても太さがあります。各弦の共振が倍音入りは大きいのでギターの音量も大きくなります。


そしてさらに倍音入りは言葉の通り、2倍音、4倍音と高音側に共鳴するので、音のレンジは広がり、リバーブ感も圧倒的に強くなります。倍音入りに耳が慣れると普通のギターが少し鼻詰まりな、まだ抜けていない音に感じるかもしれません。



ビンテージD28と新品D45という面白い比較です。ビデオの後半にコードの余韻を聴くパートとハーモニクスで比較するパートがあります。ここでギターの本来の音が分かると思います。新しいか古いか?とか素材がインディアンかブラジリアンか?という違いよりも倍音入りの45サウンドは圧倒的な音の厚みと高音の抜けがあります。


それほど倍音入りのギターには魅力があります。誤解のないように言いますが、カントリー系のプレイヤーで自分の早く弾くパッセージにはD28のレスポンスが必要というのも、もちろん正しいですし、ブルース系のプレイヤーがワザとチープな響きのギブソンを選んでブルースを歌うのも良いと思います。基本は音楽に合わせてギターを選ぶべきです。


でもギターの音質だけを客観的に評価する場合はどうでしょう。マーチン45シリーズを超えたギターは本当にどれ位あるのでしょうか? 倍音入りかどうか?これは好みを超えてギターを判断する要素の一つと言えます。倍音入りのギターにこだわり続け、ついにマーチンとは少し違った独自の倍音サウンドを作った日本の手工ギター、エム・シオザキはスゴイです。


通称R-1のサウンドです。リバーブ感もレンジの広さも別次元ですね。


手工家のギターでも倍音入りギターは多い訳ではありません。私の試奏経験値がまだ少ないせいもあり、倍音入りの手工ギターはアメリカでは3つ、日本人では2つしか知りません。メーカーではAyers JapanのOTSともう一つしか知りません。ビデオで見る限りクラシックギターのフレタの音もそう聞こえるのですが、持っている方がおられればぜひ一度弾いてみたいです。


世の中には倍音入りの手工ギターがもっとあるかもしれませんので、もし、これは倍音入りのギターでは?というものがあればぜひ教えて下さいませ。




ギターの音を判断する要素その1、倍音入りかどうか?。


すでに自分の耳が倍音なしに戻れないです。


皆様もご自身のギターの1弦を弾いて1秒後に音がオクターブ上に変化するか?をチェックしてみてくださいませ。



 





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