top of page

エッセイその4 ギターは年数とともに音が良くなるか ノッチの実験



ギターは弾き込んで行くと鳴りが良くなるという話をよく聞きます。

しかし,その一方では,いいギターは初めてケースから出した時からいい音がするという人もいます。




つまり,はじめからいい音がするというわけです。



鳴りが良くなるという人の多くは,「木が乾燥している」という理由を挙げたりします。



どっちが本当でしょうか。

(ー'`ー;) ウーン



これは長年のなぞでした。

もちろん今もはっきりこうだと言えるわけではないのですが,鳴りが良くなるとすればもっと科学的に裏付けられる理由があるような気もするのです。



昔,こんな記事を読んだ事があります。

バイオリンの名器と言われる17,18世紀のクレモナの職人が作った「ストラディバリ」や「グアルネリ」の音を現在の技術をもってしてもどうして超えられないのか。 (実際,今でもプロの演奏家はこれらの楽器に数千万円を出して買い求めている。)

これをアメリカの大学の学者が研究した結果,木に含まれるわずかな塩分が接着剤を溶かし,共鳴胴の接着部分にわずかな隙間を作るというのが原因だというのです。

それで,同じようにバイオリンを作ったら音量音質ともに,グアルネリとほぼ同じだったというのです。 (昔は山で切った木を川に浮かべて海まで流して運んだために木に少しの塩分が含まれていたらしい)


という話にあるように,ギターの鳴りが良くなるということも,何かもっと科学的な理由があってもいいのではないかと思っていました。

もしかしたら,鳴りが良くなるひとつの理由はブリッジの溝ではないかという気がしているのです。



これは20年前に私が初めて買った東海楽器の「キャッツアイ」というギターで,当時2万円のオール合板ギターです。

当時モーリスの2万円とヤマハの2万円をクラスメイトが持っていたので,わたしはキャッツアイにしたのですが,それらよりも鳴りが良かった記憶があります。


その後,ずっと弟が弾いていて先日久々に私がいじってみました。






20年間弾き続けられたギターのブリッジの弦を通す溝をごらんください。



どうでしょうか。自然に弦を通す溝が削れています。

これは,ブリッジの材質がローズウッドでエボニーよりもやわらかいためこれほど削れているのだと思います。 エボニーやもっと密度の詰まったローズの場合はここまで削れないかもしれません。


どうして,溝を切るとギターの音が良くなるのでしょうか。


カリスマギタービルダー「E・ソモギ」のサドルに関する理論を簡単に説明すると「サドルと弦は点接触よりも面接触がいい」というものです。

弦が出て来る所が溝を切って深い所から出てくると,自然にサドルに弦が巻きつく量が増えますよね。


この上さらに,溝をやすりなどできれいに削ってあげて,サドルも断面が円の4分の1の形になるのように整形しました。



さらに,溝が深く入っています。





サドルもきれいに削りました。


この音はどうなったでしょうか。

はっきり言ってまったく別のギターかと思うほど良くなるのです。

1 音の分離がはっきりとします。 2 板の鳴りがハッキリとわかるようになり,チューニングの狂いなどもわかるようになります。


持ち主の弟は「これはすごい別のギターだ」と感動してくれました。

ワオ w(°o°;)w



こうなると勢いがつきます。もう止められません。


(・_☆) キラーン


この度,実は実験用ギターとして入手した,「ヤマキ」のギターがあります。これも20年以上前の合板ギターです。 音はそれなりです。



かわいそうに,これは演奏されるよりも,いじられるためのギターなのです。 かわいそうなので,「ヤマちゃん」と呼んであげましょう。


ヤマちゃんにも同じように溝を切って,サドルを削って見ましょう。 きっちりときれいに面接触になりました。



弦がサドルに面で乗っているのがわかるでしょうか。


この音はどうでしょうか。

(ノ°ο°)ノ オオオオ


ナチュラルです。高音のキンキンした部分が押さえられて,自然な音になりました。よかったね「やまちゃん」。



でも,合板の鳴りがハッキリと出てきた気もします。 そうなると,合板の安い板のギターの場合必ずしもすべての場合にこの方法がベストかどうかはわからない部分ですね。

かえって,素人耳にはキンキンしていた方が「高音がきれい」などと錯覚をして,買っていく人もいるのかもしれません。


話がギター実験室とかぶってしまいましたが,元に戻しますと,年数が経って弾き込んでいく時に板そのものが乾燥するというのはもちろんですが,このブリッジの溝が削れていくという要素もひとつの理由というか,もしかしたら,これの方が鳴りが良くなる大きな要素かも知れないと思わせるものがあります。


ぜひ,弦高が少し高くなってきていて,ブリッジ削ってみてもいいと思うギターがあれば,ぜひ自己責任で実験なさって見てください。



有意義な冬休みの自由研究でした。




2008/5/13 追記 こういう実験を楽しんでいた頃が懐かしいですね。 ブリッジに入れる弦通しの溝をノッチと呼びます。

ノッチを入れるメリットについては,結局ナットの溝と原理的には同じものがあります。 ナットとサドルは原理的には同じなんですね。

ナットの溝もテンションをあげるように溝を削る方法もあれば,下がるように削ることもできます。 ノッチも同じようにちょっと入れた分には,テンションを下げて,サスティーンを長くして,ラウドな箱なりを引き出す効果があります。

でも,ノッチを深くマーチンの28GEのように入れると今度は弦角度もきつくなり,テンションをあげて箱なりを引き出す効果もあります。

その音色まで調整できるようになればしめたものです。 目的によってノッチの使い方を変えるのですね。

よくわからない時は,軽くわずかに入れるだけにしておきましょう。


最新記事

すべて表示
bottom of page