ギターを買おうという皆さんへ 木材の製材から考えよう
秋田杉のふるさとを訪ねてみました。 秋田県能代市の銘木センターです。
ギターが木で出来ているのは誰でも知っていますね。
でも,ギターの表板,裏板,ネック,指板がすべて違う材質というのは知っていますか。
しかも,すべての材料は全く外国からの輸入された外材で作られています。
当然いい物を探すと,どの国のどの木がいいということになるのです。
でも,日本の製作家が「日本で作った日本のギター」といいながら,外材のみで作られて日本のギターと言えるのかという意見もあります。
( ̄~ ̄;)ウーン・・・
確かに。そうですね。
せめて,音の要のトップに日本の素材を使えないでしょうか。
私のお気に入りのフォルヒのシダートップです。
この杉のトップはスプルースと違って最初から鳴ります。
サドルを象牙にしてさらにねっとりと深いサウンドになっています。
杉の柾目が使われます。ギターのトップ材は一枚の板を真ん中から本のように開いて,背中を合わせるブックマッチという方法で合わせて倍の広さになります。
(エッセイに出てくるハナムラギターの杉の1枚板のトップというのはどのくらいのサイズの木からとったのか考えると今更ながら恐ろしい話です。)
それで,左右対称の木目になるわけです。
だから,厚さは5ミリ,幅は21センチ長さは54センチあれば,最低でも大丈夫と思われます。
また,Kヤイリの社長さんが言うように,「今の若いもんは木を知らない。私らは原木を若い頃から見てきた。」というのはもっともなお話です。
肉も魚もカットされた状態で,もとがどうなっているのか知らない世代と言われていますが,木材もその通りですね。
というわけで,少し木の勉強をしてみましょう。
基礎的な知識はいろんなHPがあります。
ここから「木の雑学」のコーナーを見てください。
木材の様々な性質はこの関口さんが詳しいですね。楽器と木材のコラムもあります。
実際にギターに使われる木材の相場というものがあります。
材料の値段がわかるとギターは本当に人件費で出来ているというのがよく分かります。
では,私も銘木センターに地図を頼りに行ってみます。
(ノ^_^) ハイ!
ありました。非常に狭い道を入ります。
天気はくもりですが,原木が積んであるところなど何か期待させます。
担当の方と名刺を交換して,倉庫を案内してもらいます。
私が求めている,天然の秋田杉の柾目というのは見つかるでしょうか。
ヽ(・_・;)ノ ドッヒャー
なんとあるのです。しかも大量に。
木目はここから選り取りみどりです。
でも,乾燥が足りません。どれも新鮮な木材です。
出来れば5年は自然乾燥させたいという意見もあります。
メーカーはもっと早く使うと思います。
これらは建材用ですので,どうしても製材してから時間があまり経過していないものになります。
ここで豆知識ですが,ギター用の柾目は実は同じ柾目でも少し違うんですね。
絵にしないと説明が難しいのですが,たての木目は当然柾目ですよね。
5ミリの厚さで横の線はどうなるかがポイントです。
線が斜めに走るでしょうか。
それとも線が全く見えないでしょうか。
これも全く線が出ないように,横の線が斜めではなくまっすぐになれば,強度は最大になると言われています。そのためにはノコギリで製材するのではなく,斧でたてに割った状態で板を取っていくとこうなるのです。
割るということです。
ノコギリでとっても柾目ですが,横の線は斜めになることが十分にあり得ます。個人製作家の中にはこの板を木目のランアウトと呼んで使わない人もいます。
しかし,斧で割って使えるような丸太はおそらく樹齢で400年を超えるものになると思われます。
ぜひ,自分のギターのトップの木目をごらんになってみてください。
すべてが均一になっているわけではなく細い目と広い目があることがわかると思います。左右対称も確認出来ますか。
さて,どうして,天然の秋田杉がいいのでしょうか。(まだギターにいいとは決っていませんが)
この木目の年輪が1年の木の成長だとします。
南方の暖かい所では,成長が早いのでこの目が広くなります。この木目は狭い方が硬いと一般には思われます。
木のもともとの強さというか硬さが違うので目だけで判断は出来ないのでしょうけど。
一般にギターマニアも目が詰まっている材を使っているというのはいい事として受け止めますよね。
そうなると,トップ材は北に位置する寒い地域で成長がゆっくりの木の方がいいということになります。
(⌒^⌒)b なるほど
実際に柾目のものを見てみますと縞模様が入っていたり,カスレと呼ばれる黒い汚れみたいなものが入っていたり,色目のきれいな木目を探すのは難しく根気の要る作業です。
秋田杉では植林の歴史が120年くらいだそうです。そうなるとこの幅のきれいな柾目が取れる木はほとんどありませんし,植林された造杉(ぞうすぎ)では,目の幅も広くなりギターにはおそらく使えません。
奈良の吉野杉というのは歴史が長く,200年モノの造杉があるというのです。これはかなり天然に近い木目になっていたりしますので,プロでないとわからなくなったりするかもしれませんね。
ここでまた,豆知識です。
秋田県の材木業界では,秋田杉というと造杉のこと,つまり,植林された杉材を言うそうです。
天然の秋田杉は天杉(てんすぎ)と呼ばれるようです。
秋田で取れる杉は秋田杉しかありませんので,わざわざ秋田杉と言わないようです。地元だから。
天杉か造杉か。話をする時にここがポイントのようでした。
秋田杉と言うと紛らわしくなるようです。
(  ̄O ̄)ホー
倉庫には様々な目的の板が並んでいます。
主に建材ですね。今まで楽器に使った人はいないようです。
スピーカーを作っている人はいるようで,かなりいい結果が出ているようです。
ギターも原理はスピーカーと一緒ですよね。
期待できます。
しかし,ギターを作るにはすでに数年乾燥しているものがないと難しいですね。
(ー'`ー;) ウーン
どこかにないでしょうか。
センターの職員さんに案内されてとある銘木店に行ってみました。
そして,倉庫の一番奥の方に少しだけあるらしいのです。
行ってみましょう。
(」゜ロ゜)」 ナント!!
すごいサイズです。幅は40センチくらいあるでしょうか。
厚みは7ミリですが,すべて同じ木から引いて(製材して)あります。つまりブックマッチと同じことですね。
長さは180センチはあると思います。
私は尋ねました。「これは何用ですか。」
「アーこれは,天井用だな。亡くなった親父が引いたものだから,そうだなー,うーん,10年までは行がねべども7,8年は確実にめえ(前)だろうな。」
(ノ°ο°)ノ オオオオ
ついにギターが作れそうなものがあるではないですか。
「まぁこのサイズの柾(まさ)は最近は出ねぇよ。昔は今よりも奥地の杉を切っているがらね。
当時は今よりももっと天杉が高い時代だったがらね。その頃に引いたモノだから安ぐはないんだよね。」
私は聞きました。「一枚,いっいっいくらですか。」
(トップが3枚は取れるな二枚板を買えば3本分になる。ふっふっふっふ。)
これは天井用だから1束(いっそく)ナンだよな。バラでは売れねんだよ。
1束そうだな~。
20万かな。
(o;TωT)o" アウッアウッ
これは買えません。
でもこの木目はすごいですね。
このサイズなら好きな部分を選べる気がします。
木目を見てギターをオーダーするというある種,究極の世界があるような気がしてきました。
さらに,木の豆知識です。
(聞いた話ですが銘木店主も知っていました。)
日本建築の神社などに使う木材は新月切りと言って月が全くない夜に木を切るようです。
そうした木材には虫が付きにくく腐りにくいと経験で昔から伝わっているようです。
実はヨーロッパのバイオリン作りの人々の間ではこのことはすでに常識の範囲のようで,昔から知られたことのようです。
おそらく木の細胞に月の満ち欠けは何かの影響を与えているのでしょうね。人間も影響されていますしね。
奥が深いですね。
先ほどの天杉の柾はさすがに買えませんが,木については大変に勉強になりました。製材所も案内していただきました。
中杢(なかもく)の板目をとっています。最初から何の目的の板を製材するかを考えて原木を買ってきているということでした。
当然ですよね。
楽器用の製材もそのサイズに合わせて原木を切らないと無駄が多いですよね。
でも,木材を考えていくと本当に気の長い話なのです。
楽器用にいい木材を欲しいとします。そうすると300年~400年くらい切らずに残さないといけないわけです。
そうなると親から子へそのまた子へ子孫へ継承していく仕事にしないとこれまた難しいですよね。
そして,輪切りにしたら,最後はのこぎりではなく,斧で割って,たても木目に沿って板を取るようにします。
そこから,何年も乾燥させます。そして,ようやくギターになります。
そう考えると,単板のトップというのは大変なことですね。
そうすると,数千円で板は買えるとしても変な音しかしないいい加減なギターを作ってすぐに捨てられたらそれこそ,環境破壊なのではないかと考えざるを得ないところがあります。
やはり,安すぎるギターは環境的にもよくないことですね。
(ノ^_^) ハイ!
ギター弾きはいいものはただお金を出せば買えるという考えからもっと進んだ所まで行く必要があるのかもしれませんね。
いいギターを作る所から,さらに,環境も考えているマーチン社は確かにすごい会社ですね。
最後に案内をしてくださったNさんと一緒に一枚。
御土産に割りに新しい天杉を二枚ゲットしてきましたが,それがまた,部屋の中で杉の香りを放つのです。
これは癒されますね。
ビンテージギターの音色はおそらく木の細胞が化石化してあの響きを作るのではないかと思われます。
それまでは,数十年(最低25年?)弾きこむ必要があります。
それに耐えられるギターはやはり,それなりにしっかり作られた物でなければ,おそらく無理でしょう。
また,音色も良くなければ,その年数を弾きこむことも難しいでしょうね。
コリングスは20年先を見越して作っていると宣伝しますし。
2万円ギターで習いに来て,すぐにうまくならないからやめて,ギターはほこりをかぶったまま押入れの奥でかびていく・・・。
こういうことはぜひとも避けたいですね。
時間をかけて育てた木を,長年かけて築いた確かな技術でギターにして,そのギターで熟練した演奏家が音楽を奏でるという事は,人類の英知を結集した実に芸術的な物語だったのですね。
ようやく私も分かってきました。
ギターを選ぶ時には値段だけではなくいろんな基準があるものですね。
ギターを選ぶ時に20万というと確かに安い物ではないのですが,熟練した職人が30日かけて手作りすれば,日当1万なら材料別で30万です。
そして,数百年間成長したギター用の木材は数千円で買えるかも知れませんが,お金だけでは買えない時間を経て成り立っているものであることも忘れたくないですね。
いいギターはぜいたく品ではない。これが私のモットーです。
ギター選びの参考になればうれしいですね。
(≧∇≦)b OK!
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