ミッドスクープをご存じでしょうか?
ピックアップを通した音がアコギらしくないと感じる原因はここにあります。
ミッドカットの効果を確認してみましょう。
スカイソニックと出会ってから今までのピックアップの考え方を調整する必要が生じました。
これはうれしいことでもあります。でも新たに学ぶ必要がある知識などもあり,消化するまでに時間がかかってしまい,WEBの更新が遅くなっておりましたが,ようやくまとめて発表できそうです。 数回に分けて発表したいと思います。
その1はミッドスクープです。テレビ番組の名前ではありませんよ。
ププッ( ̄m ̄*)
アコギの生音は良くドンシャリと形容されます。低音がドンと出て,高音がシャリとくる中域(ミッドレンジ)があまり突出していないという意味です。
実際にスペアナを見てみるとそれほど中域が下がっているわけではないのですが,そう感じるのですね。
アコギの生音をまずは聞いてみましょう。

ギターはヘッドウェイドレッド,レコーダーはソニーです。
では聞いてみましょう。
ギターの開放弦を1-6まで弾いた生音のスペアナですね。

ギターの6弦開放の音がE2つまり82.4Hzです。
なので,それ以下の音はわずかな共鳴しか出ません。
でも注目すべきは高音の方です。
8KHzは30dBで出ています。10KHz,12KHzも少し出ています。
82Hzの6弦の低音と高音域が出ているのでアコギらしい音がします。
では今度は903ピックアップを通して,アコギアンプから出てきた音を聞いてみましょう。
スカイソニック903は多くのユーザーがナチュラルとかエレキ臭さがないとコメントしてくださいます。それでもアコギの生音とはやはり違う感じがします。
その原因はミッドレンジ(中域)にあります。
そのスペアナを見てみましょう。

上の生音の波形と比べてみましょう。
500~2KHzのカーブがかなり違いますね。
そして,4KHz~8KHzの高音の音量差も大きいですね。
そうです。
(・_☆) キラーン
ピックアップを通すと中域が突出してしまうのです。
これがアコギらしくないと感じさせる一つの原因です。
でもマグでもピエゾでも中域が太くなることで始めて他の楽器との共演が可能になったと思います。オベーションの時代になって初めてアコギとピアノのデュエットなどが可能になりました。
鉄弦ギターのマイク録りではこの共演は難しいと思います。音色が細すぎます。
若い頃,横浜の関内でスタジアムに夕日が落ちるころに車のFMから流れて来たこのアルバムの4曲目など非常に好きでした。
でもミッドが突出しているサウンドではリードギターはできてもストロークでは本来のアコギらしい音からは遠く,耳障りな音になってしまいます。
ギターのマイク録りとラインの対照的な音の違いがわかる動画もあります。
やはり後半の無言劇という曲などピエゾのストロークは苦しい音がしますね。
というわけで昔からオベーションのプリアンプにはミッドカット,もしくはミッドスクープというボタンが付いていたのです。
かなり安い方のギターのプリアンプでもこの機能が付いていたと思います。

この中ではプリシェイプとなっていますね。
その他に400Hzを中心にカットするEQになっていました。
このプリシェイプボタンでストロークが何とかOKな音になるわけです。
では実際にアンプのMIDつまみを使ってミッドカット,ミッドスクープをしてみましょう。

MIDを全部下げます。
(」゜ロ゜)」ナント!!
やり過ぎでもないんですよ。
いかがでしょうか。より本来のアコギの音に近づいたでしょうか。
つまみがフラットの時には聞こえなかった低音と高音が聞こえてきます。
中域に消されて出ているのに聞こえないという感じですね。
ミッドスクープ後のスペアナを見てみましょう。

(ノ°ο°)ノ オオオオ
かなり最初のアコギ生音の形に近づいたと思いませんか。
もう一度最初の生音のスペアナ画像を見てみましょう。

高音側が似てきました。
低音と高音を足すのではなく,ミッドを減らすことで低音と高音が聞こえてくるのですね。
今度は音を連続で聞いてみましょう。
前半がつまみがフラットのもの,後半はミッドスクープの音です。
いかがでしょうか。違いがありますか。
ありますよね。
(o⌒.⌒o)ウムウム
皆様がいいギターを持っているとしましょう。
903ピックアップを搭載しました。それでもある程度良い音は出ます。
でも本当に多くの人が求めるいい音を作るにはEQつまりイコライジングがカギになります。
ラインになった時点で生音ではないので,EQを使うというのは必要ですね。
なので,結論はアコギの良い音を作るためには,ピックアップを取り付けて終わりではなく,そこからさらにEQの微調整をしていく必要があります。
でも決定的に元のピックアップの音が良くないとどうにもなりません。
インブリッジのピエゾをあとからシュミレーションで加工するフィッシュマンやヤマハのシステムなどがありますが,どれもどんなに時間をかけてもいじっても音のレベルは上がりません。
音質が少し変わるくらいです。
スカイソニックによりマグを中心に音作りをしてもエレキ臭いと言われないシステムが作れるようについになったのです。
そうなると,コンタクトの役割も変わってくるのです。
マグと付属のマイクだけですでにかなりバランスが取れていますので,EQをプラスするだけでかなりの音が作れてしまいます。
なので,プリアンプなしでもこのEQがあればそれでもOKです。
これはMXRの10EQですが,これでミッドスクープと同時に失われやすい8KHz~10KHzあたりを持ち上げられます。
同時にアコギの風味を決定する6弦開放以下の周波数もいじれます。
これには31Hzと62Hzの調整があります。
これを持ち上げることで本当にアコギらしい音が作れます。
125,250あたりを少しだけカットして,超低音と超高音を補うわけです。

しかもこのEQは入力側のゲインと出力側の音量調整があり,実質プリアンプとして使えます。
しかも18V仕様でこのEQを通しただけで音が良くなったように感じます。
このEQはアコギの音作りに非常に有効ですね。
DIのセンドリターンにこのEQを回すという方法もいいかもしれませんね。
簡単にミッドスクープするなら,アンプのMIDでも効果があります。
さらにプリアンプやEQを使っても効果があります。
大切なのはアコギらしく聞こえない時は中域が出過ぎの可能性があるということですね。
ロス在住のギタリストHIROSASEと話をした際に彼がレコーディングエンジニアの方法を説明してくれました。
レコーディングである楽器の音が聞こえにくい時にエンジニアはその音量を上げるのではなく,どの楽器の音とぶつかっているかを突き止めてその楽器の音量を下げるというのです。
引き算の法則ですね。
903を搭載したら試してください,ミッドスクープ。
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