日本製ギターと海外製ギターを弾き比べる その2 結局アメリカ製ギターとの対決でした。まずは日本製を5本弾いてみます。 何か並べてみると分かることがあるでしょうか。
まずは日本製5本です。
KヤイリのJ45タイプ,ヤマハのSJ-200タイプ,手工品のJ45タイプ,ヘッドウェイD28タイプ,寺田製ビンテージD28タイプです。
これを並べてみるとはっきりすることは,これらのギターはギブソンとマーチンの設計を元にしているということです。
ほとんどがアメリカンギターの設計を元にしているわけですね。
調整の方法はそれぞれあると思いますが,手工品とメーカー製は少し違っていると思います。
この本の中にナットの仕上げ方が詳細に書かれています。
ナットのRの取り方,溝の処理の仕方など参考になります。
サドルの作り方,考え方もあります。
フレットの処理の仕方なども詳しいです。
文章よりも写真が多いので英語ですが,いいですね。
でも,私の実験結果ではビンテージと手工ギターの調整方法とメーカー製ギターの調整方法は少し違っているように思います。
メーカー製ギターではビンテージや手工ほどは鳴らないからですね。
最初から良く鳴るギターでさらに調整で鳴りを引き出すと,鳴り過ぎになるかもしれません。
リバーブが深すぎという感じです。ビンテージでは弦鳴り感を出してちょうどいいかもしれません。
でも,メーカー製ギターにこの弦鳴り感を出す調整をしてしまうと,本当に弦鳴りになる可能性があります。
ギターの作りがちょっと違うということですね。
そういうメーカーの作りを考えた調整をそれぞれのギターに施してみました。
これから日本製のギターをまずは5本弾いてみましょう。
ストロークはウルテム系の0.8ミリくらいのピックを使っています。
リードギターは最近話題のV-PICKを使います。 これは630円とピックとしては高いのですが,この音は一度聴くとやめられません。
三角の1.5ミリだと思います。
メロディーが太くなります。音量も上がります。
ニュアンスもとてもいいんです。ぜひ一度使ってみてください。
録音は別の部屋でPCとか冷蔵庫などの低周波のノイズがしない,子ども部屋でやります。
SN比が良い部屋の方がいい音に録れますね。
そして,箱なりをテストする方法として1弦の7フレットを指で弾いてすぐに右手の指で弾いた音を止めます。
そうすると,1弦以外の弦に共振して箱鳴りが生じます。
この箱鳴り具合がそのままリバーブ感に大きな影響があります。
このチェックも音源の途中に入っています。
1 ローコードのサウンド
2 1弦の共振の確認
3 ANJIのフレーズでソロギターの確認
4 Gのストローク (多くのギターはGがきれいに響くように作られていると思います。)
5 リードギターのフレーズで単音とリバーブ感の確認
6 何かそのギターからイメージが膨らんでくれば勝手に何かを弾いてしまった音
大体こんな流れで音源が出来ていますね。
それでは,トップバッターは日本の手作り代表 Kヤイリ のJ45タイプです。
作ったものは最後まで責任を持つという頑固なポリシーのKヤイリです。
知らない人が見ればJ45と違いが分からないですよね。
ギターは非常に軽く出来ていて,ハードケースも軽くても立派ないいケースです。
サンバーストもきれいです。
当然,単板のマホガニーサイドバックです。
合板でそっくりなものがあるので要注意ですね。
これは単板モデルなので箱鳴りが気持ちよく,音色にコーラス感があります。
これは その1 にもあるようにナットとサドルを調整してあります。
この調整がないとどうしてもいい音に感じられないんですね。
(^∧^) スミマセンです。
ワンポイント評価
ネック幅が太くなく,テンションも痛くなく弾きやすいです。箱鳴りも感じます。 ネックの状態は軽いへの字型で非常にいいです。これによって高音もバランスよく出ていると思います。 まじめに作られたギターですね。
続いては ヘッドウェイ HD-518 です。
D28タイプのギターですね。スプルーストップにローズのサイドバックですね。
トップの木目もいい感じです。ピックガードはこだわりの塗りこみです。
GOTOHのオープンバックペグですね。
ネックはつや消しで,ヘッドウェイお得意のネックとボディは別々の塗装です。
そうするとジョイント部分の隙間を塗装でごまかすことが出来ません。
この精度はかなり高いです。そして,あり溝も一般のダブテイルより大きめですね。
ヘッドウェイのすごい所はネックの安定度ですね。
素材がすでに違う感じがします。ネックの木材に硬さを感じます。
これは松本の工場で説明していただきましたが,詳しくはヘッドウェイのWEBに書かれています。
この安定したネックなので,弦高をかなり下げることが出来ます。
今2.2ミリの1.6ミリくらいですが,もっと下げることも可能だと思います。
エレキ弾きの方にもお勧めできますね。
そして,私の感想ですがヘッドウェイの500番代はテンション感が非常にいいのです。
その後の700番台よりも私は500番台がいいのです。
それが調整によってさらに弾きやすくなっています。
その音を聴いてみましょう。
ワンポイント評価
ネックは43ミリで三角のゆるい感じです。非常に弾きやすいです。
音が前に抜けていく感じはネックの角度が良くて安定していることも大きいですね。
ノンスキャロップのような芯のある高音はソロギターが出来るドレッドノートですね。
ヘッドウェイはドレッドがいいですね。
それでは浜松と言えば世界のヤマハです。
YAMAHA CJ-32
スプルーストップのメイプルサイドバックのジャンボタイプです。 ギブソンのSJ-200のデザインから来ていますね。
黒のボディにアバロンのパフリングが映えますね。
これに白のピックガードをダブルで付ければ,昔のチャゲアスという感じでしょうか。
きれいな黒ですね。
デザインもバランスが取れています。さすがです。
オリジナルサドルの1と2弦のバランスが悪かったので,サドルは作り直しの必要がありました。
でも,このギターのサドルが規格外だったのです。
なんと幅が3.8ミリあるのです。そうなると市販の材料が使えないので秘蔵のブロックから削ります。
動物の角から作った秘蔵の素材を使ったサドルです。 これにしたらさらに音が良くなりました。
このヤマハのこのクラスのゴールドのペグが非常にいいんですね。
ヤマハはWEBでギターのパーツを調べられるようになっており,非常に親切なサイトです。
バックは木目が見えないくらい黒いので,部屋がそのまま写ってしまいます。
でも内側から見ればトラ目が出ているメイプルです。
本当は少し薄いシースルーだとこの木目も見えてかっこいいような気がしますね。
サイドバックがメイプルのギターの特徴ですが,輪郭がカリーンと出てきます。
以前にスタMでのオタクセミナーでも実験しましたが,ストロークの場合はメイプルのドレッドを良い音と感じる人が圧倒的に多くいました。
メイプルの切れ味はバンドの中でストロークしても,弦の輪郭がぼやけずに聞こえるような鳴り方ですね。
もしもスモールボディにメイプルだと低音が物足りない可能性もありますが,ジャンボボディにメイプルというデザインがまたいいんですね。
まさにギブソンのSJ-200のデザインは音を知り尽くしているというか,音楽を本当に知っている人が行き着いたデザインなのかもしれませんね。
ちょっと録音の加減で低音の量感が他のギターよりも少ないように聞こえるかも知れませんが,実際はすごい音量です。
最後の方はついこのイメージだとアリスのチャンピオンかなと思ってしまいました。
ワンポイント評価
さすがヤマハの25万クラス。調整で低音から高音まですごい迫力です。 テンション感も絶妙で3弦のチューニングでもキリキリしていません。 ストロークも繊細なアルペジオもOKです。意外にANJIのソロも合っているのです。 特にストロークでは最高の存在感ですね。はっきり言っていい音です。
続いては 手工品 安藤ギター J45タイプ
これまた離れてみるとJ45ですね。これは新品で入手したものです。
でも必ずしも音はJ45そのものではありません。
もっと日本的なテイストを感じる暴れない上品さがあります。
そして,すごいのは弾きやすさです。
弦が金色のブロンズ弦のためにテンションが低いのかと思い,いつものマーチンフォスファー弦にしてみました。
でも,テンションは軽いのです。
テンションの軽さは設計でした。
製作家の安藤さんとも話しましたが,さらに研究して行きたいという姿勢を持っておられるのでいつか有名になる時が来るかもしれませんね。
ポリウレタン塗装ですが,薄くてギターの鳴りがいいのです。
マホガニーのワンピースネックで工作精度も手工品を感じます。 ネックヒールにも幅がありますね。
サイドバックはマホガニーです。
手工品にはそれぞれの音があると思いますが,どうしても最初の音が弦鳴りに聞こえてしまい,サドルとナットを交換いたしました。
安藤さん (^∧^) スミマセンです。
サドルはタスクです。タスクと牛骨を混ぜて使う音が良いと思う時がありますよ。
手工品の新品のナットを交換するというのは少し勇気が必要ですが,オタクな信念でやってしまいます。
もちろん良くなりましたよ。
弦との接触面積があまりに点だったで調整したかったのですが,ナット側の弦高も限界だったので,交換したのです。
あまりに軽やかに弾けるのでリードギターを弾きたくなります。
ベンチャーズを弾いてしまいました。
ワンポイント評論
テンションの軽さがすごいです。ストレスなしで弾きやすいです。 でもしっかりと音量があります。エレキ弾きの方もこれならOKでしょう。 J45のような粗い感じではなく繊細さのあるバランスのいいJ45ですね。
寺田楽器製 ビッグサム D28タイプ 単板
VGやヒストリーを作る寺田楽器製のギターですが,すでにジャパンビンテージとも言える25年~30年くらい前のギターです。
いろんな弾き傷があります。 指板エンドには BIG THUMB とあります。
ヘッドはなぜか thumb なのです。
サイドバックはローズの単板です。
すでに音量とか箱鳴り感,音抜けが新品では絶対に出ない音ですね。
フォークが似合いますね。
この音量ならストリートでもいいかもしれません。
ワンポイント評価
日本のギターがまだコピーを目標にしていた時代のものだと思います。
でも丈夫で長持ちの日本製ギターを作っていたと思います。
この音量と高音の抜けのよさはもしかしてピックアップを付けたらライブ用としてすごいかもしれません。
普通の単板ギターが30年経つとこういう音になるというひとつの見本ですね。
とここまで5本の日本製を弾いてみました。
いかがだったでしょうか。まとめて弾いてみると結構体力が必要ですね。
聞くのもそうだと思いますが。
(^ー^)お疲れ様でしたぁ~♪
何か共通する感じがありましたでしょうか。
ギブソンやマーチンを真似て作るのですが何か日本らしいものを感じるでしょうか。
作りのレベルがしっかりしていることを感じます。
まじめに寸法を出してしっかり仕上げるという見た目の部分での仕上げの良さはまさに日本のレベルは高いと思います。
ある大きなショップの海外買い付け担当の方が言っていましたが,すごくいい音のギターを作る製作家はまだまだいるんですが,日本のユーザーが値段からして納得できる仕上げレベルに達しないので取引き出来ないギターが結構あるというのです。
昔ハワイでレンタカーに乗ってスーパーに行った時のことですが。
戻ってみたらレンタカーのドアに隣の車のドアが開いた時にぶつけた跡がビシッと入って凹んでいました。
これはレンタカーを返す時に保険を使う事になるのかな?と思いつつ恐る恐るドアを見せたら・・・ ベリーファットなおばさんは
NO PROBLEM! (≧∇≦)b OK!
という感じでした。
日本では間違いなく車両保険適用となるレベルでしょう。
やはり,日本人の感性は仕上げに細かいところがあると思います。
ギターでもそのことは現れているように思います。
(⌒^⌒)b なるほど
緻密に仕上げるという点では非常に良い特質,国民性のように思えますよね。
この仕上げの緻密さが日本製のギターのひとつの特徴だと思います。
でもギターは音が勝負ですね。楽器ですから。
次はいよいよ本家アメリカンギターとの対決ですが,どうなるでしょうか。
o(^∇^)o ワクワク
海外製と言っておきながら良く考えたらアメリカンギターですね。
比べやすいように上記の音源だけ並べておきました。
Kヤイリ J45タイプ の音
ヘッドウェイ HD-518の音
YAMAHA CJ-32の音
安藤ギター J45タイプの音
寺田ビッグサム ビンテージの音
新岡先生はどのギターが欲しいですか?と聞かれると非常に悩みます。
どれにも用途によりメリットがありますので。
ストロークならヤマハ。リードギターなら安藤ギター。フォークなら寺田。
バランスならKヤイリ。ドレッドでソロならヘッドウェイでしょうか。
ヤマハのメイプルの切れ味にも魅力を感じますし,安藤ギターの弾きやすさも捨てがたいです。
音量を求めるなら寺田ビンテージ,ネックの安定度で低い弦高を求めるならヘッドウェイ。
ネックの握りやすさギターの軽さはKヤイリ。
どれと決められない良さがありますね。
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