ナットとサドル調整の新たなレシピ J45とCEO-4の音を聞く

最終更新: 2019年3月11日


ナットの溝をV字に切れるナットやすりを使った新たなレシピです。 このテンションの緩さと鳴りのよさは気持ちがいいですよ。 GIBSONのJ45とMartinのアディロンマホで実験してみました。

Gibson と Martin を調整する、弦高は低く,テンションは緩めで,音量は大きく。

そんなことが出来るでしょうか。それにはレシピが大切ですね。




以前にラーメンの専門家が書いていた興味深い話があります。

それは,プロが書いた完全なレシピを再現できれば経験が浅い職人でも美味しいラーメンが作れるというものでした。

(  ̄O ̄)ホー


フランス料理や日本料理を自在に作るためには,レシピよりも料理のセンスなどを長い修業で養う必要があるでしょうけど,どちらかというとラーメンのように決まったものを作る場合は,よりレシピに重きがあるという話だったと思います。 (でもチェーン店でも味が違うから職人のカンもかなり大切ですよね。)


レシピが分かっていればかなりの程度美味しいものが作れるというのですね。

(≧∇≦)b なるほどっ!



ギターの調整は果たしてどちらでしょうか。

職人のカンが重要なのか,それともある程度のレシピが分かれば誰でも出来るでしょうか。

(ー'`ー;) ウーン


最終的には音を判断できる耳が必要ですが,ある程度レシピにそってやればうまく行くようにも思います。


最近使っているHOSCOの両刃のナットやすりはV字に溝をカットできます。

これによってテンション感を上げることが出来ます。


ということはその分弦高をぎりぎりまで追い込めるかもしれません。 そして,テンションが溝の形状で上げた分,溝の角度は緩く出来る可能性があります。

というよりもこのナットやすりをつかって緩い角度で入れた時の音がとてもいいのです。


このグッズはオタク心をくすぐりますよ。



ナットやすりの紹介



これらを実例で少し紹介しましょう。

今回はJ45です。2007年製の近年のピックアップ付きの普通のタイプです。 たぶんLRバッグスのインブリッジピエゾですね。

状態を診断しましたら,ネックが起きているのにさらに,10フレット付近でのわずかな順反り,それに対処するためにロッドを絞め込んで,7フレットからは逆反りにしてS字状態になっているのでした。


ロッド調整で直るのは7Fを中心にした,順反りと逆反りですね。これ以外の場所で起きている反りは手ごわいのですね。


時々このネックS字状態のギターがあります。 これでナットの位置が本来の位置に近づくためになんとか弾けるのです。

でも,これだとどうやっても鳴りがおかしく感じられます。 ボディが気持ちよく鳴らないし,あるところでバズるという感じです。


この場合の解決はネック起きが問題というのがわたしの結論です。


この部分はいろんな製作家の方々のご意見や,リペアマンのご意見もお伺いいたしましたが,やはりわたしのオタク実験の結果から言うと 「ネック起きを直さずにいい音が出ることはない」 というものです。


もちろん若干というか許容範囲というのがあります。

ネックもマイナス側を理想としても,プラス側にほんのわずかで,12Fから15F辺りの音が出ればOKというのがショップの一般的な基準になると思います。


ここで言うマイナス側というのは,ヘッド側から見て14Fのジョイント以降がわずかに下がっている状態を指しています。


わたしはこれが好きなんです。


こういうネックを見るとそれだけでそのギターを欲しくなってしまいます。

(* ̄m ̄) ププッ



ネックリセットも解決策ですし,ネックアイロンも万能ではありませんが,かなり有効です。

私は実は1年以上前からネックアイロンを使用しているんです。

確実な結果が出てからWEBに紹介するつもりでいました。

さらに,これを書くとリペア希望が殺到しても困ると思って,躊躇していた部分もあるんです。

でも,ネックアイロンでネック起きと反りに対処できるんですね。


ただ,わたしはねじれには対処できません。 これは他のクランプが必要になります。

その部分の解決方法はまだ将来のことになります。

(^∧^) スミマセンです。


下の写真はJ45ではなく,モーリスSですが,こんな感じで物々しくやっているんです。

起きに対処するクランプは現在売っていませんので,横浜のギターオタクな製作所の社長さんに作ってもらいました。

チューニングしたまま調整できる,特殊なヘッドウェイ用とか,コリングス用のロッドレンチも社長に作ってもらいました。


斉藤社長 いつも  (^人^)感謝♪ です。


それで,今回はJ45ですが,同じように起きを直しました。

写真を忘れました。

(^∧^) スミマセンです。


元起きと10F辺りの反りがあり,ロッドで逆反りSネックという不幸なパターンでしたが,直した後の写真です。

どうでしょうか。

1弦側がまっすぐに近いですよね。



6弦側もまっすぐに近いです。


やはり10F付近の反りはちょっとジグがないと難しいですね。

ネックの状態を見ながら,鳴りがもっとも出るポイントにロッド調整するのがまた重要なのですが,これにも少し経験が必要かもしれませんね。


(⌒^⌒)b なるほど



サドルの方を見てみましょう。

一般に最初から付いて来るサドルは点接触に近いものになります。

一番上がフォルヒ用タスク。

真ん中がGibson用タスク。

一番下が,テイラースタイルで多くのギターに採用されているタスク。


どれも弦の跡からすれば点接触に近いですよね。

点に近い方がテンションが上がります。 力が点でかかるので,箱鳴り感がアップする傾向があります。


だから新品のギターにこの点接触のサドルというのは分かります。

でも,テンションは上がる傾向にあると思います。


では,そのGIBSON用のサドルを出来るだけ面接触になるように角度を調整します。



弦の当たりが点のサドルよりも少しだけ長くなっているのが分かりますでしょうか。


これだけで,テンション感は緩くなります。




面接触に近いイメージですよね。


弦高が同じでも左手に感じる握りのテンション感はかなり緩くなります。


そうすると考え方ですが,テンションがあって弦高をぎりぎりに下げるのと,テンションを緩くして弦高を下げないのとどっちがいいかですね。

具体的な話をすると,OMとかドレッドのスケールだと12Fで,2.2ミリの1.6ミリくらいがいい感じです。

最近のフォルヒもかなりそれに近いと思います。


でも,OOOとかGIBSONなどの短いスケールだと2.5ミリの2.0ミリでもテンションがきついと感じません。

ローデンとかマッキロイなどはブリッジがピンではなくてスルーブリッジにして,テンションを下げてその分弦高を下げなくてもいいので,12Fを2.5ミリと2.0ミリに出来たりします。


下げなくてもいいというのはメリットがいろいろあります。


それで今回のJ45も弦高は2.5の2.0にしたいので,サドルでテンションを落とします。 その分をナット側でテンションを少し稼ぐというパターンですね。

これで,さらにナット側でもテンションを落としてしまうと,ダラダラした感じの音になると思いますよ。


そこで,ナット側が今回の新しいレシピの紹介です。




なんと,ナット側の全面接触を目指します。

このV字に切れるナットやすりなら出来るのです。


V字の溝にすることで普通のナットやすりよりもテンションが上がります。

それで,溝の角度は非常に緩い感じでぎりぎりの角度で入れます。


溝が完全な水平になると,弦の頂点が溝の指板側に来れなくて,ピヨーンというシタールのようなサウンドが出ますので,ご注意ください。

わずかに角度が必要ですが,ペグポストの穴までの方向をよく見てそれよりも緩い角度で入れます。



見えにくいですが,V字に切れています。



弦を外すと弦の型が溝に残りますが,ヘッド側の端まで行っていますので全面接触に近い感じですよね。


これにより弦鳴り感と箱鳴り感が絶妙に出ます。



レシピのポイント

ナットやすりの角度はかなり緩めです。

1Fの弦高をぎりぎりにすることで,テンションも上げすぎないようにします。

ちなみに1F弦高は,3Fを押さえて1Fをカチカチ叩いて判断します。

この3Fを押さえての1Fの弦高がくっ付く寸前がいいのです。

1,2弦だけわずかに3弦から6弦よりも高いセッティングが多いですね。

これでメロディーを立たせるようにしていると思います。


(≧∇≦)b なるほどっ!




この音を実際に聞いてみましょう。


最初にこのギターを手にしたときは,ネック起きと逆反りで・・・

(; ̄Д ̄)なんじゃと?

というかんじでしたが,今の音を聞いてください。


この調整の特徴は倍音が非常に豊かになるという点です。

これによって弦鳴り感に箱鳴りが加わってとてもいいバランスに感じられます。

音源の途中で単音を短く音を出します。

その際の背後になっている音を聞いてみてください。 弦に適切なテンションがかかっているため ポワーン と他の弦が共振して箱が鳴ってリバーブのように聞こえるでしょうか。


GIBSON J45 調整後の音

どうでしょうか。 高音弦のジャリっとした感じと低音の緩さがドンシャリに出ている,ストロークも気持ちがいいですよね。 意外にソロギターもいけますよね。 メロディーがはっきりと前に出るサウンドです。 これまでわたしが店頭で弾いたりしたギブソンの多くがコンディションそのものが,最初からおかしかったりしたので,GIBSONを正しく評価できなかったかもしれません。 このサウンドは長く弾きたいという気持ちにさせるギターです。 ネックアイロンでの修正でどれくらいの期間その状態をキープできるのか,はっきりしなかったので無料サービスとしてやっていました。 (もちろんナットサドルの料金はいただきますよ) でもこれまでの例からすると戻ってしまうギターもたまにありますが,すぐには戻らないギターの方が多いようです。 ビンテージ化して時間が長く経過したものはより曲がりにくいモノもあります。 でもそういうものは曲がれば戻りにくいです。 曲がりやすいけど,戻りやすいものもあります。 フォルヒは曲がりにくいけど,戻りにくいよさがあると思います。 この分野はもっと追求してみたいところです。 オタクだから。 (* ̄m ̄) ププッ ネック起きが直れば,音は素直でレスポンスが良く,ドレッドでもソロギターに使えるくらいメロディーが立ちます。 逆にネック起きがあればメロディーが立たなくなることがあります。


レシピのおさらい 1 サドル側でテンションを下げる感じの面接触にする。 2 ナット溝をV字に切れるやすりを使う。 3 ナット溝を全面接触の感じで緩く入れ,6~3弦は1F弦高もくっつく寸前まで下げる。 4 ペグのポストに弦を噛むようには巻かず,巻き数でテンションを微調整する。 5 音の確認はギターを寝かせて弦を弾いてバックを鳴らさない音も確認する


これでやってみるととても気持ちがいい音がします。 演奏者よりも対面で聞いている人にさらにいい音に感じられるかもしれません。 では,GIBSONの次はマーチンでもやってみます。 J45に対抗して似たような感じのギターにしましょう。 (ジョークです。たまたま調整依頼が重なっただけですので) (* ̄m ̄) ププッ



これでもマーチンなのです。


CEO-4というマーチン社のクリス・マーチン4世CEOが自らデザインする冒険的なギターです。


CEOが採用した,16シリーズと同じボルトジョイントに,指板はブラックミカルタなので,指板が強固で減りません。


女性が長い爪で弾いても,これならへこむ心配はありませんね。


16シリーズだとネック起きがないかと言えば,実際は起きるものもあります。

実は,指板の強度はネック強度に影響すると思われます。 エボニーを厚く使ったネックは確かに剛性があり,弦を張りっぱなしでもOKというものも存在します。


恐らく,安いエボニー指板よりもブラックミカルタの方が硬いと思います。



ちなみに我が家の子供用のリトルマーチンの指板もブラックミカルタですが,年中弦は張りっぱなしでOKです。 コンパウンドゲージですが。


このギターのネックジョイントは超優等生です。 完璧と言えるかもしれません。

そして,実はトップがアディロンダックスプルースなのです。

今やアディロンをオーダーするとアップチャージがどこでもかなりかかります。 コリングスの場合,アディロンダックをオプションで付けると19万くらいアップします。


(; ̄Д ̄)なんじゃと?


1930年代は標準がアディロンでしたが,今や高級品になりました。

これを前述のJ45と同じようにナット側をV字に切れるナットやすりで,かなり緩い角度で入れるのです。

そうすると,出てくる音は・・・


♪ ポロローン。

(」゜ロ゜)」 ナント!!


響きます。テンションが緩いのに音量があります。


特にアディロンのパンチ力が6弦を強く弾いた時にはっきりと感じられます。


これはテンションはきつくないのに,深い鳴りがある非常に高度なバランスです。 ロッド調整もばっちりという感じです。

サドルはタスクで,マーチン用をそのままに近いのですが,弦高と接触面積を調整するために特に1,2弦の上面を調整してあります。

牛コツと牛コツでもいいのですが,今回はナットは牛コツ,サドルはタスクとブレンドスタイルです。


私は割りとブレンドが好きです。


もちろん弦高は低いですよ。

12Fで,2.1ミリの1.6ミリです。バズりませんしテンションもきつくありません。


ではこれも音を録音してみましょう。

CD-2の前でただ弾くだけです。

出来るだけJ-45の時と同じようなイメージで弾きたいと思いますが,その時の気分で弾いていますので,同じにはならないんですね。

ププッ ( ̄m ̄*)


マーチンCEO-4 ナット調整後のサウンド

いかがでしょうか。


一般に,GIBSONの低音はベースのようで,Martinの低音はピアノのようだと言われます。

これは弦長の違いから来るテンションの違いが大きく関係していると思います。

二つのサウンドファイルを比較して聞くとその違いが良く分かると思います。

Martinの密度の濃い中低音は,リバーブ感があり本当に音に包まれる感じで高級なギターの音を感じます。

アディロンダックのトップに,マホガニーのサイドバックはまさにD-18GEと共通のサウンドキャラクターですが,43ミリナットの細めのネックから来る弾きやすさはこのギターがさらにいいのです。

6弦開放のパンチのある低音でわかるように,テンションのバランスが取れていると左手には全くきつさを感じませんが,非常に深い低音と大きな音量が出ます。

これにはネックのコンディションもかなり大きく関係していると私は思います。



そこまで,ネック起きにシビアにならないショップも,製作家も実際におられます。

でも私が本当に気持ちがいいギターはすべてこのネックコンディションがいいものだけなんです。


(ToT)>゛スミマセンデス。


やはり,こだわりが人それぞれにあるものです。 私はいい音でなおかつ弾きやすくを求めるのでした。

オタクだから。

ププッ ( ̄m ̄*)



神戸のカリスマプロショップでお話というかありがたい講義をしていただいた時の事です。

私が調整によって違いがありますよね・・・というような話をした時に,店主はいいました。


「ギターの音の違いは設計の違いです。調整の違いではありません。」


ワオ w(°o°;)w   言い切るのか。


つまり,あるレベルに達すると調整をベストに持っていくのは当然のことという話ですね。

ナットサドルをベストに持って行った上で,設計の違いを確認できるというか,ナットサドルが調整されているのは当然でしょという感じなのです。


(⌒^⌒)b なるほど


市販のメーカー製のギターはそういう意味では未完成ということも出来ます。 最終的に職人が手をかけてバランスを整えて,初めてそのギター本来の音が出るのかもしれませんね。



今回のナットの弦溝の取り方は,かなり失敗しないレシピだと思います。

基本はサドルで面接触にしてテンションを落とし,ナットはV字型のやすりで緩い角度で全面接触を目指して切ります。


もちろん1F弦高もかなり低いですよ。

いい音が出ればギターはもっと楽しくなりますね。


O(≧∇≦)O イエイ!!


V字の緩め,サドルは面で。

これは一度挑戦してみてくださいね。



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