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ヘッドウェイギター 訪問

  • 執筆者の写真: niioka
    niioka
  • 2009年12月9日
  • 読了時間: 10分

第二弾はヘッドウェイ訪問です。メーカーですが手間隙をかけて作られていました。 百瀬さんともお話をさせていただきました。



2009年の11月に長野に行ってきました。


SUMI工房の翌日はヘッドウェイを訪問してみましょう。

まずは工場見学で,かなり細かい工程まで説明していただきました。


一度に指板にフレット溝を切る専用の機械も興味深いですね。 これで一度に20Fまで切れたら時間の節約,つまりはコストダウンですね。

最新のNCのマシンも導入されていて,ヘッドのイーグルのマークなどもNCルーターを使ったものでした。

エレキの工程もすべて見せていただきました。


最後にアコギの工房です。


もはや伝説の職人となりつつある,百瀬さんとアコギ談義をさせていただきました。



百瀬さんとはかなり突っ込んだギターの話が出来てうれしかったです。

記念に案内役の営業の方とも一緒に一枚撮っていただきました。

目の前には THE MOMOSE のネックが並んでいました。


私が考えるアコギの疑問点をいくつか百瀬さんにぶつけてみました。

ヘッドウェイのネックのアジャストロッドが大変不便な位置にあるのですが,理由を聞いたらそれほど深い理由がないということなどは面白かったです。

(* ̄m ̄) ププッ


実際SJモデルにはサウンドホールから調整できる普通のロッドが入っています。


なぜ,ヘッドウェイのネックは強固な感じがするのでしょうか。


答えはがっちり作るからということですが。 写真にも見えますが,ネックのあり溝部分が他のメーカーよりも大きいという点もあるようです。

確かに言われてみるとそうですね。 ネック幅に近いくらい,あり溝が大きいですね。

しかも,手動プレス機を使うくらいの力でネックをしっかり差し込むということです。


普通のネックはロッドの効きが7Fをボトムとするように効くのにヘッドウェイではまた違った方法であるのも興味深いものでした。

他にもネックが起きないようにいくつかの工夫がされていることを教えてくださいました。


マーチンのネックが弱いように思えるのですが・・・という質問に対しては・・・

「確かに弱いかもしれませんが,マーチンの場合はリセットしやすいというメリットがありますね。」


ヘッドウェイのネックはがっちりと入っているゆえに逆にリセットになると大変だということでした。 でも「近年物はほとんど起きたということはないですね。」というすごいネックなのです。


ヘッドウェイのネックは握ってみてもなんとなく硬さを感じるのです。


しかも,40万以上の高級ギターではなく20万以下のレギュラーラインのギターでもネック材がしっかりとしているのです。

値段からすれば長い年月寝かせたいい材料を使えるわけではないと思いますが,なぜネックがしっかりしているのでしょうか。


それは営業の方が説明してくださいました。

「これはWEBにも載せているので秘密ではありませんよ。」

ということですが,以下の写真をご覧ください。



木材の含水率を調整する部屋です。

ネック材を一度含水率のピークまで上げて,その後カラカラに戻して,最終的に調整するというものらしいです。

100%のピークまで上げる事で,木材の細胞の含水率のばらつきをなくせるようです。 その後に含水率を下げていくと,平均的に抜けていくということでした。


もしも,普通に含水率を調整しただけでは木材の中で,水分が抜ける部分と抜けない部分が出て,強度の違いからねじれの原因になるということらしいです。


この含水率調整はメーカーでは一般に行われているようですが,これを上手にやるとネックの安定度が違うそうです。

この機械は個人ではちょっと買えないでしょうね。 こういう機械を導入して一般の材料でも長期間寝かせたような材料のように安定した木材を使えるというのはメーカー製のメリットのひとつですよね。


それに対して,個人製作家は長期間の自然乾燥というものを使うので,値段も上がっていく・・・ということもあるかもしれません。



上の機械に入れる前も,その後も材料を自然乾燥させます。

この自然乾燥の時間が長いということでした。


ネックを荒削りしても,さらに削っても,磨いても,各工程ごとにネックを一定期間寝かせているというのも秘訣らしいです。 その作業を現場で見せてもらいました。


これはメーカー製ですが,手間がかかっていますね。


このネックの安定はアコギの弾きやすさ,音の良さにはかなり重要な部分だと私は思います。

しかーし,ギターは家具ではなく,楽器なのでネックが安定しているとしても・・・

「弾いてみて最終的にどういう音楽が出てくるか」


これが最重要ですよね。


今回の訪問でわかったことがありました。 百瀬さんには 「長期間使えるギター」 という目標があることでした。

「20年,30年と使って欲しい」というのです。


つまり丈夫に作っているということですね。


ダナ・ボジョアの「丈夫なギターよりも,いい音のギターを作りたい。だからある程度弱くても修理しやすいギターを作る」という考えと違うスタンスですね。


私がこれまで弾いたヘッドウェイギターの率直な感想としては,500シリーズが良かったと思っています。

2000年から新たに作り出したと思いますが,その頃は弦高をあまり下げられないネックの仕込み角度でした。 そのネックの仕込み角度が2004年ごろに変更になり,500番台のシリーズは2005年ごろに出た記憶があります。

その中でも,528番のモデルがありました。

スプルースにローズのモデルで,ドレッドもOMもありました。 少し値段は高かったのですが,テンション感がやわらかくネックはどこまでもまっすぐで,弦高はちょうど良く弾きやすかったのです。

最近の700番のモデルも弾きましたが,私は500番方が弾きやすかったと思います。

実際,私のところに700番台の2009年モデルが新品の調整で来ました。 テンションをやや下げて,ヘッドウェイの標準から弦高も下げて,弾きやすくいたしました。


その点も質問してみました。

「500番と700番ではつくりが少し違います。700番はネックの仕込みを少し昔に戻してあります。」

「(≧ロ≦) アイター・・・


これは困った。

ヘッドウェイの音がまた硬い方向へ行ってしまうのでしょうか。

500番台のネックの仕込み角度が結構付いていて,軽いレスポンスが良かったのに・・・。


丈夫なギターに共通するのは,テンションをかけないと鳴らないという現象です。


つまり,調整でテンションが弱くなるようにナットとサドルをいじった時に弾きやすくはなるのですが,音量が出なくなります。 それで,結局は面白くない音になってしまい使えないのです。

だから,剛性が高いタイプのギターはある程度のテンションをかけないと鳴ってくれません。

そうすると,左手の握る力が必要になり,早いパッセージは弾きにくくなります。

もちろんテンションが弱すぎても,生音は面白くない音になりますので,これもNGです。


プロはどんなギターでも弾きこなせる演奏レベルがありますが,アマチュアの場合はとにかく弾きやすく!

これに尽きます。テンションが軽いギターがいいのです。

(⌒^⌒)b なるほど


そうなると,テンションをかけないと鳴らないギターではなく,ある程度緩くても反応するギターが私は好きなのです。

全部の弦を半音下げた方が弾きやすいという人がいますが,まさにその状態です。 スタンダードチューニングでもそうなって欲しいと思っています。


私の調整はそれを目指しています。


基本はスタンダードチューンでもテンションを強く感じないギターというのを目指しています。

変則チューンをやる時はそれ用のギターを使うことで分けて考えます。

このまま言葉だけでは説明できないので,休み時間に実際に私が求めているものをお弟子さんに弾いていただいて百瀬さんにも聞いてもらいました。



私のコリングスを弾いたお弟子さんは・・・

「(ノ°ο°)ノ  オオオオ 弾きやすいー 」

と感動してくださいました。





「弦高低くてまるでエレキのようですね。でも音量もあるし,完璧な調整ですね。」



彼もギターは上手ですが,音楽を表現するという話になると,もっと深い部分で百瀬さんに説明したいところがありまして,ついに自ら弾かせていただきました。



ウォーターイズワイドを弾きながら,弱音のレスポンスと低音から高音までの音量のバランスを富士山のように取ることが必要な理論を説明させていただきました。


低音が富士の裾野のようにどっしりと支えて,中域のハーモニーが厚みを加え,メロディーラインは山頂の雪で色が変わっているようにはっきりと目立つような,はっきり聞こえるものになればソロギターとして成立する音楽的な演奏が出来ますよね。

そうすると,厚みのある低域,中域,きれいなメロディイーの高域までは三角形のようなイメージになりますね。


ヘッドウェイのギターからこの中低域がズウーーンと出てくればいいんですが・・・・ この部分の厚みが欲しいんです。


そして,トップの剛性が高いためか,弱音のレスポンスが弱く感じます。 弱く弾いたら弱く,強く弾いたら強く音が出ないと,結果としてダイナミックレンジは狭いギターになってしまいます。

弱音にどこまで反応できるかそういうレスポンスが欲しいんです。 こういう感じです。

と実際に聞いていただいて,説明する機会がありました。


本当に一ギターオタクの声にも耳を傾ける百瀬さんの姿勢には大変感銘を受けました。



ぜひとも,ヘッドウェイのネックで,テンション感は500シリーズのようで,低音の厚みと弱音のレスポンスのあるギターが出て来たらうれしいのですが。

楽しみですね。


でも,自分で弾かないのに演奏家が求めるものを形に出来るとすれば,百瀬さんはやはりすごい人ですね。


どうして,ヘッドウェイここまで言う気になったかですが・・・

松本駅前にオグチ楽器があります。

ここのアコギコーナーはヘッドウェイカスタムであふれています。 担当の有村さんはヘッドウェイのカスタムでその可能性を探っておられるのです。


ここで沢山のカスタムを弾かせていただきました。



そして,私のギターも持ち込んで実際にその場で音を出して比べてみました。


それで,ヘッドウェイのギターの特徴を予習して行ったのでした。

(≧∇≦)b なるほどっ!


私はOMはマーチンが完成させたと思います。 本来のOMは素材もアディロンとハカランダでしたし,低音が十分に出るものです。

最近のOMギターで低音が十分出るギターはコリングスなどかなり少ないと思います。


それで,一般的な量産メーカーの場合は深胴にしたり,低音が出るようにオシリが少し大きいタイプの方がバランスが良いと思います。フォルヒのGなんかもそういう感じですね。

低音が出ないOMよりは,ドレッドで高音が出るタイプのギターがソロギターにはいいかもしれません。

そういう意味では,ヘッドウェイはドレッドである程度高音が出るので,ドレッドでソロギターという方がいいかもしれませんね。


私の好みはヘッドウェイならドレッドですね。


オグチさんでアディロントップのヘッドウェイギターも弾きましたが,やはり少しトップが硬いような気がするのです。

もう少し,音が跳ね返ってくるタイミングが遅くてもいいような気がするのですが・・・

でも,このネックの安定感はなんとも魅力がありますね。

これで音のレスポンスとテンションが好みに合うギターが,安く量産出来たらすごいと思うのですが。

O(≧∇≦)O イエイ!!


手工品,メーカー品それぞれを比較するといろんなことに気付かされますね。

また少し理解が深まりました。


でも,音楽は最後は感性から生まれてきますね。

理由は分からないけどいい音,いい音楽。その感性から始まるような気がします。

今回の長野ツアーをアジャストしてくれたKさんに感謝したします。

(^人^)感謝♪


帰り道の紅葉もきれいでした。



穂高あたりの町並みは森の中という感じで,普通の家もペンションのように絵になりますね。



長野の夜は友人宅で,おでんにサラダに,ミックスナッツ。

飲み物は少しの赤ワインと糖質ゼロのビールもどき。(アサヒが多いです。)

それにウィスキーかジンですね。これにギターを弾いて盛り上がる幸せなひと時でした。

d(>_< )GOOD!ベリーね!



私は,ご飯パン麺なしで健康を保っておりました。

糖尿人ではない皆様も夜は炭水化物なしで,おかずのみがいいですよ。



いい音を目指す感性で作られるSUMIギター。

メーカーとして手間隙を惜しまずに作られるヘッドウェイギター。

長野はギターとゆかりが深い土地のひとつですね。


また行きたいです。

(≧∇≦)ノ ハーイ♪

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