メーカー製のギターでも設計のバランスが良いと思えるギターです。 生音でOKが出せるテイラーGSです。 素材の違いによる音の違いと,ニコピンとESを対決させた感想も載せました。
メーカーが作るギターは手工家(ルシアー)が作るものとはやはり方向性が違いますよね。
少数のギターを素材を吟味して手間をかけて完成度を上げて作るルシアーものは当然すごいものがあります。
値段もすごいですし。
でも,工業製品として大量生産をしながらもすごいなと思えるギターを作っているメーカーもあります。
そのひとつがテイラーですね。
過去にエッセイでもテイラーを取り上げたことがありましたが,確かにアメリカNo1と言われるテイラーはすごい所がいくつかあります。
まずネックがすごいんです。45ミリ指板とは思えない弾きやすさです。
ネックの握りの形も弾きやすさも業界最高と言われることがあります。
つや消しでさらっとした感触も良いですし。
フレットの揃い方もすごいです。
塗装も硬いですし,傷が付きにくいのに薄い塗装膜です。
何よりもネックのジョイントです。
NTネックつまりニューテクノロジーネックといわれる物で,ネック起きを短時間で直して,料金は5000円位というのがすごいです。
これによってネックジョイントはいつも適正に調整されて弾けるとなればメーカー製ギターとしてはすばらしいではありませんか。
ライブの前後にギターのことを余り気にせず弦を張りっぱなしで,ネックがおかしくなっても簡単に起きが直せるとなれば確かにプロがテイラーを選択する理由も理解できます。
(⌒^⌒)b なるほど
でも,肝心の音はどうでしょうか。
アコギの命は音色にありますよね。
その昔ウィンフィールドの全米フィンガーピッキングコンテストの優勝者の景品としてラリヴィー,テイラー,ギャラガーの3本が出ていました。
優勝者から順番に欲しいギターを選べるというシステムです。
毎年テイラーを選ぶ優勝者が少なくて,毎年最後にテイラーが残るということがあったようです。
それでテイラー社はある年,最高級モデルを投入しました。
確か岸部さんがウィンフィールドに出た年のことです。その時の優勝者もラリヴィーを選びました。
2位の岸部さんもギャラガーを選択し,3位の女性がテイラーをもらったというのです。
でも値段はテイラーが一番高かったらしいのですが。
これは確かにテイラーの生音に関してプロギタリストが感じていることが現れているエピソードかなと思います。
私も実はテイラーの生音に関しては・・・
(ー'`ー;) ウーン
コメントが難しい事もありました。
もちろん良い音なのですが,でも同じ値段ならもっと良い音のギターもあるような気がしていました。
工業製品としてのメーカー製ギターとしては他にはない完成度があるのに生音が・・・残念と思うこと良くありました。
もちろん100万クラスのテイラーは良い音がしますよ。
他にもPSというプレゼンテーションシリーズとか,900シリーズとか。
通常の価格帯で生音だけが何とかならないかなーとよく思っていたのでした。
が,ついに生音もあるレベルに達したテイラーがあったのです。
テイラーのGS グランドシンフォニーというモデルです。
材質違いで4種類あり,最初から生音勝負のESなしのノンピックアップ仕様です。
材質はスプルーストップにローズ,とメイプル,シダートップでローズとマホガニーという定番のラインナップです。
上記写真はメイプルモデルです。
実はGSを4種類全部弾きましたがどれも良いのです。
これは設計が良いということだと思います。
これまでのテイラーの314などの14というグランドオーディトリアムとの違いは,オシリの大きさだと思います。
そして,ウエスとのくびれが上にやや上がったハイウエストで,ウエスト位置が違うためにGS用のケースには他のギターが入らないのです。
GSはオシリがやや大きいのでヘッドウェイのドレッドケースには,オシリから無理やり詰め込んでようやく入る感じです。
オシリは6ミリくらい両端が広いような感じです。
この頭が小さくオシリが大きいスタイルに最近の多くのフィンガー向きモデルはなっているような気がします。
フィンガースタイルだとどうしても低音が必要です。さらに,メロディーは高音が必要です。
それを同時に求めると昔ながらの,ドレッドでは高音が物足りないですし,OMではビンテージ以外では低音が足りないということになります。
それで,両方のバランスを求めると,頭が小さくオシリが大きい形になるのかなと思っています。
この手のモデルは最近本当に良くありますが,昔からローデンもラリヴィーもこれに近いものがありますよね。
モーリスのSだと少し低音が足りないような気がします。
SはOMに近い感じなので,フィンガーの場合はもう少し大きいセミジャンボ系のモデルの方を求める人もいると思います。
でも,ルシアー物はまた違いますよ。
ルシアーの場合は,ボディの上部を厚みを変えたり,ブレイスを工夫したりして鳴り方を変えて,ボディサイズがドレッドでもフィンガー向きの音を作る人たちがいますから。
一本ごとに余り細かい細工が出来ないメーカー製の場合はテイラーGSのような,ある程度ボディサイズで音を決めることになりますので,この形がフィンガー向きの音になるように思います。
(⌒^⌒)b なるほど
このサウンドは聞けばわかりますが,まず低音が出ます。
これはフィンガーだけではなくストロークでもOKの音です。
ギターは本来こうあるべきという感じの低音が出ますよ。
写真をアップで見てみましょう。
貝のワンリングがおしゃれです。
メイプルバックは3ピースです。バックが2ピースと3ピースで音の違いはそれほどないと言われます。 マーチンのD-28とD-35の音色の違いは,バックの違いではなく音分け(トップのチューンで意図的に音の違いを作っている)だと思います。
メイプルはトラ目が出ると本当にきれいですよね。
普通のGSはネックがマホガニーのつや消しのタイプになりますが,メイプルだと艶出しになります。
ネックもメイプルですね。時々ネックマホでボディだけメイプルというのもありますが,やはりボディがメイプル艶出しで行くならネックもメイプル艶出しというのがこだわりですね。
この辺の柔軟性がテイラーらしい所で,音だけではなく売れるデザインを良く知っているなーと感心するところです。
ギブソンのSJ-200などのイメージが強いからでしょうか。美意識の問題でしょうか。
艶出しとゴールドペグがマッチしたりします。
テイラーGSはハードケースもすごいんですね。ワニ皮風かぎ付きです。
ケースのヘッドには枕もあり,ダイヤルロック付きのケースになっています。
弦高はかなり低く設定できます。
ナット側を下げすぎていなければ6弦2ミリ以下も可能です。
音を出してみましょう。
♪ ポロローン
(≧∇≦)b OK!
音の特徴はカラッと明るいアメリカンサウンドです。
アイルランドのシダーローズとは対極にあるような気もしますが,これは良い音です。
単音で12F以降を弾いても箱鳴りがすごいのです。
サスティーンがずっと伸びて行きます。
これはネックジョイントでのロスがない証拠だと思います。
気持ちよく弾くことが出来ます。
メーカー出荷時点では弦高など高めになっているので,自分の好みに調整する必要がありますが,調整されればいっそうこのすごさがわかるかもしれません。
このバランスの良さはいままでのテイラーにはなかったものではないかと思います。
そしたらやはり,2008年からこのモデルは6シリーズとしてレギュラーにも入るようです。
ピックガードもカッタウェイもESも搭載されたこれらのモデルが出るようですね。
メイプルなら616CEESとかになるんでしょう。
これに新しい試みのレアアースとニコピンのセットその名もニコピン-アースをセットしたGSを教室に持ち込んで楽器店にあるテイラー314CEESと対決させてみました。
確かに,ライン一本で出るサウンドとしてはテイラーESはさすがですね。
1弦から6弦までのバランスの良さを感じます。
波形を見てコンピューター解析をしているのでしょう。音のイメージはバランスが良く取れています。
が,音の情報量の点ではニコピンが圧倒的なのです。
この差はテイラーESがオールマグ仕様で,マグネチックコンタクトの感度から来るものでしょう。
例えると,CDとMP3の違いというか。
CDクオリティからMP3がリバーブ感とか細かい音を間引きされているように,生音から比べるとテイラーのESサウンドもかなり間引きされた音になっています。
その点で,ニコピンの方が感度が高いのです。指先の表現力が明らかにあります。
もちろん314CEESが27万くらいで売っている時に,テイラーGSは定価39万で実売は30万くらいでしょう。
さらにニコピン-アース仕様にステレオケーブルとMIXPROまで付くとプラス7万ちょいになります。
でも考え方ですよね。
27万出して,やっぱりエレアコ的なサウンドと思うか,もう少し出してもエレアコとは違うサウンドを得るかですよね。
このサウンド対決をギター教室のあるクラスでやりました。
前座のヤマハのインブリッジピエゾは,皆さん 「アコギとはちょっと違う」 という感想でした。
テイラー314CEESは 「おおっ良い音ですね。」 となります。
テイラーGSにニコピンアースの方は・・・
ワオ w(°o°;)w
「どれが一番良いですか」 と訪ねると満場一致で・・・
「テイラーGSにニコピンアース」 という結果でした。
ピエゾのきれいな高音とマグの低音が同居しているのがポイントですね。
また,テイラーのESはトップを叩く音をそれほど拾いません。
これはハウリング対策として仕方がないところです。
それで,叩き系の人がテイラーを買うとトップを叩きすぎて割るかもしれませんよ。
ププッ ( ̄m ̄*)
やはり叩く音は控えめに拾うので,叩きたい人にはテイラーのESは向いていないかも知れませんね。
ちなみに先日,別の生徒さんと一緒にテイラーの914CEESとニコピンの対決もしましたが,テイラーのESは高級機種の方が生音が良くなるために,それとのギャップを感じるところがあり,よりエレアコ的な印象を受けてしまいました。
テイラーの900シリーズなどの高級シリーズの生音の感動に近い物が,テイラーGSだと感じられるので,GSのボディ設計はやはり良いものだと思います。
このようにギターとしてのバランスがとても良いので,ラインの音もやはり良い物になるわけなんですね。
NTネックのことでテイラーを一本使いたいと思っていた私にはとても満足なテイラーGSだったのです。
ちなみにニコピンのピン部分を使っていないのでこの場合は正式にはニコ-アースというなんとも殺虫剤のような名前になってしまいますが,ニコピンがすでに定着しているので変えられない気もしています。
そして,他の材の組み合わせも試してみました。
4種類の組み合わせにはそれぞれの味があります。
スプルース&ローズがやはり定番の安定感があります。というかいつもの良い音という感じです。
輪郭がきりっと出て,ローズの深みもあるという音です。日本人が好む音でもありますね。
シダー&ローズは深みがあります。テイラーの音は少し硬めなのでシダーで甘くしても良いと思う人もいるかもしれません。
シダー&マホは鳴りもの同士の組み合わせでレスポンスが良いのですが,甘いもの同士の組み合わせにもなるので音は癒し系の感じもあります。
癒されたい人が弾くのにはとても良いかもしれません。
また場所的には病院で弾くというのも良いかもしれませんね。
ププッ ( ̄m ̄*)
でも長いことテイラーのシダー&マホを使っている人はやっぱり甘いと言います。
スプルース&メイプルはこれまたレスポンスが高く,デザインも美しく魅力があります。
特にハイフレットのリバーブ感がレスポンス良く長く続くのは,メイプルという軽いサイドバックから来るものだと思います。
レスポンスがいいので,腕もある程度はっきり出てしまう可能性がありますが,中級者には戦力になると思いました。
テイラーの硬めの音をシダーでやわらかくという方向に行くか。
テイラーの音はもともと硬めが魅力なんだからスプルースで行くか。
これは好みがあると思います。
これはローズのモデルのバックです。
メイプルとは違って落ち着いた雰囲気がありますよね。
ネックもマホになりますので色合いもメイプルとは違いますね。
いずれもナット側でややテンションを下げるように調整すると良い感じです。
サドルはテイラー用のタスクのままで底面を上手に削るだけでもある程度納得できる音が出てきます。
実際にこのギターを先日レコーディングで使いましたが,アメリカンな曲ではやはり重宝します。
ローズモデルなのにマーチンのD-18のような明るい音のイメージがあります。
ちなみにシダーローズのギターで HeyHey を弾くとイメージが違いすぎました。合いません。
でもシダーローズのギターは,スカボロフェアーなどアイルランドの雰囲気の曲を弾くとこれまたぴったりとマッチするのです。
やはり,ギターの音色は演奏する音楽との関連も大きいものだと再認識いたしました。
例えば,地酒の味の方向はその土地の食べ物との関係で作られていきますので,酒の味だけを取り出してうまいのまずいのというのは時々おかしい話だなと思うことがあります。
ずっと昔ですが,どの日本酒がうまいかまずいかと粋がっていた頃に,友人のお父様で家が2,3軒建つくらい人生で酒を飲んで来たという方とご一緒したことがありました。
粋がっていた私は,「土佐は高知の 酔鯨(すいげい)の吟麗(ぎんれい) が美味しいと思います。」などと知ったかぶりをのたまいましたら,友人のお父様のご意見はすばらしいものでした。
「そうですか。私も昔はいろいろやりましたが,今は酒に合わせて飲んでいます。」
「(≧ロ≦) アイター・・・
その通りですね。この酒を肴にどう合わせるかという境地があるのですね。
だからこそギターソムリエのような人も必要なんですよね。
音楽とギターの傾向を理解してその組み合わせもアドバイスできればそれは本当に強い味方ですよね。
叩き系で変則チューンをしたい人にもギブソンを売ってしまう店員さんがいますからね。
ガットギターにサンライズ付けたいという人に 「どうぞ」 と売る人もいるといいますからね。
o(ToT)o ダー
話がそれましたが,テイラーGSはテイラーの中でもアコースティックを感じるギターのひとつだと思います。
フィンガーにもストロークにも対応します。
スタMのセミナーの際にすでにこれを登場させましたが,生音対決のコーナーではマーチンOM28Vと手工品2本と4本の比較をしました。
どれが一番良かったですかという質問に,高級手工品に人気が集中しましたが,これが一番よい良い音と感じた人が5,6人いました。
ライブコーナーでもラインの音もきれいに出ていたと思います。
頭は小さく,オシリは大きいのが今後のギターのトレンドになるでしょうか。
私はこの手のボディがこれから来るような気がしますよ。
∠( ̄∧ ̄) ラジャ!
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