※2007/6/29更新 塗装の情報を更新しました。
将来ビンテージになり得るギター コリングスの話。生徒さんに数人コリングスユーザーがいるんです。 ラッカーがいいのか,ウレタンがいいのか塗装のことも少し書いてみました。
全国のアコギショップの店主は間違いなく一般のユーザーよりは多くのギターを弾いてきた人たちだと思います。
その人たちがほとんど共通の結論に達しているのは興味深いことですね。
それはこの本を見ればよくわかります。
これは廃盤になる前にゲットしておきたいですね。
いい音のギターを求めたギターショップの店主がついに行き着くところは,ビンテージギターです。
時間を経た古いギターという事ですね。
(≧∇≦)b なるほどっ!
古いギターはなぜ音がいいのでしょうか。
このアコギマガジンにビンテージギターについての特集があります。
この中にはかなり重要なことが書かれています。
ウッドマンの坂尻さんが書かれていますが,ビンテージギターのあのサウンドはトップの塗装と関係があります。
トップの塗装が次第に年月と共に退いて行って,塗装とトップの板が次第に一体化していきます。
当初艶出しぴかぴかだったトップがつや消し風に変わっていきます。
そうすると,きれいな高音の響きで,巻線にも芯とパンチがあり,プレーン弦の音色が太い,あのビンテージ独特のサウンドが出てきます。
実際にトップをリフィニッシュ(再塗装)したギターを何本か弾きましたが,オリジナル塗装のギターと比べると音が曇っています。
幕がかかっていて抜けていないサウンドです。
ここから抜けてくるのに(枯れるのに)また20年とか30年かかるかもしれません。
そうなると,最終的にビンテージのサウンドを目指したい人の場合はどうしてもトップがラッカーのギターという事になってきますね。
おそらく,ポリウレタンのギターでも薄く塗装されたギターは20年経てば当初の音とは違うビンテージ風のサウンドがいくらか出てくると思いますが,ラッカーで長く時間を経たギターとは少し違うような気がしています。
そう考えますと,ウレタンやUV硬化の塗装をするギターはまさに今,ライブ用のツールとしての価値を持つギターが多いのかもしれませんね。
フォルヒ,ラリヴィー,テイラー,ボジョア・・・・などはそういうギターなのかもしれませんね。。
2008/5/18 追記
ラッカー塗装で時間がたってビンテージになるというのは間違いありませんね。
しかし,ラリヴィーなどはカナダで寒いために特注のウレタン塗装を使用しています。
ラッカーは寒さで割れて,ひびが入る傾向があります。
ウレタンの方が使用感はさらさらで非常にすべりがよく,古いラッカーのようにべたつくことはないと思います
塗装がラッカーよりも硬い状態になると思いますが,木材に染み込む感じはラッカーより少しゆっくりのようにも思います。
でも,ウレタン塗装でも時間が経過すればビンテージ風のサウンドはやはり出てくるのです。
つまり,塗装の種類だけではなく,塗装の薄さもかなり重要ですね。技術と手間が大切でしょうね。
ビンテージサウンドという意味ではラッカーが有利かもしれませんが,ウレタン塗装がビンテージにならないというわけではないと思いますよ。
しかし,今も弾けて20年後にもビンテージサウンドを楽しめるような,自分と一緒に時を重ねて,自分がビンテージになった時に,いい音に育っているようなギターがあるとすれば,それは魅力があるような気がします。
ビンテージギターは設計が古いわけですので,当時のあまりハイポジションを使用しない音楽にあわせた設計になっていると思います。
それで,弦高を下げにくい問題や,反ったときのネックのアジャストがないこと,ネックの元起きやいろんな点を現代の技術でカバーしつつ,ビンテージのサウンドに将来なり得るギターにはどんなものがあるでしょうか。
もちろん個人の製作家のギターでは沢山あると思いますが,メーカー製ではどうでしょうか。
Martinはすでにネックもワンピースではなくなっていますし,元起きぎみのギターもかなりあるので,今のレギュラーMartinを長く所有という気持ちにはなりにくいですね。
元起きしやすいギターを買って,最初からネックのリセットを見込んでいるのも変ですよね。
カスタムのMartinならいいかもしれませんが。
ギブソンもレギュラーはかなり仕上がりが粗い感じもありますが,カスタムなどは将来ビンテージとなり得るかもしれませんね。
将来の音まで考えるとギター選びがさらに難しくなりますね。
(ー'`ー;) ウーン
ではメーカー製で15年以上経てビンテージサウンドになり得るモノがあるでしょうか。
そのひとつはコリングスではないかと思います。
もちろんボルトジョイントですので,本来のダブテイルのビンテージサウンドは出ないと言い切る方もおられるかも知れません。
テイラーやフォルヒと同様に,少し高音にボルトジョイント特有の音色があるという鋭い耳をもたれる方も少数ながらおられるかも知れません。
ワオ w(°o°;)w
テンションが高めでつらいという方もおられるかも知れません。
でも,それらは調整でカバー出来たりします。
プロ仕様の弦高は6弦12Fで2.0~2.1ミリ,1弦で1.5~1.6ミリとかが良くあります。
そういう弦高にしてもテンションが残るギターは,普通の弦高の時にはテンションがきついかなという感じでないと,逆に弦高は下げられませんね。
そして,そういうテンション感があるギターを軽くさらさらと弾くのがプロの弾き方ですね。
テンションがゆるいギターをバシバシ弾くのはアマチュア的な感じがしますよね。
(私も最近ようやくわかってきました。)
かるーくかるーく,脱力して弾くのが一番ですね。
でも音がそれで小さくなるわけではないんです。
( ̄ー ̄)ゞ フフフのフッ
奏法の話はまたいつか。
コリングスの定番はドレッドとOMですが,その中でもOM-2Hというのは有名ですね。
OM-2HとはOMのボディサイズに,ローズウッドのサイドバックを意味する2のグレード(ちなみに1はマホ,3はローズで装飾などがアップ),Hはヘリンボーンの縁取りの意味ですね。
弾いてみるとなるほど基本がしっかりした音がします。
でも,最初に弾いたときはそれほどすごいギターとは感じませんでした。 やはり,コリングスでも調整がしっかりされていないとその魅力は引き出されてこないように思います。
御茶ノ水あたりのショップリペアではどうしても弦高などは揃えられますが,音色までは揃えられないような気がします。
ナット下のボンドによる音詰まりが気になりますし。
いいギターだとすぐ違いがわかってしまいます。
o(ToT)o ダー
一本は生徒さんのコリングスのOM-2HBです。
Bとは何でしょうか。
左がOM-2H,右がOM-2HBです。
そうです。Bはヘッドの化粧板でわかるように,ブラジリアンローズウッドのBです。ハカランダなのです。
サイドバックの木目を見るとわかりますよね。
定価は120万を優に超えるギターです。
コリングスは素材がいいことで知られています。 エボニーは縞エボニーですが,艶が出るくらい密度が濃いものを使います。
この黒光りする黒檀は最近は少なくなりました。
でも,なぜこのブラジリアンのコリングスがここにあるかと言いますと,私が調整したOM-2Hを聞いた生徒さんが,自分のOM-2HBの音がどうしても納得できないというので,調整依頼でした。
単純に2本を弾いて見ます。
私が調整済みのOM-2Hがハカランダよりも明らかにいい音です。
(ノ°ο°)ノ オオオオ
OM-2HBには何か潜在力というか可能性は感じますが,まだ引き出されていない音でした。
調整作業をしてみてわかりましたが,サドルの下にインブリッジピエゾが線だけカットされてそのまま入っていました。
サドルを作り直さないでそのままといういい加減仕上げでした。
さらに残念ながらナットの下には下敷きが入っています。
これではコリングスも音が曇ります。
ビル・コリングスがどんなにいいギターを作ったとしても,その後のショップの仕上げがいい加減では本来のサウンドは出ませんね。
コリングスの調整は正直難しいです。
何をやっても音に跳ね返ってきます。
それだけ,よく出来たギターともいえます。
何かはさむとそれがすぐに感じ取れます。
わずかにノッチのところを棒やすりで軽くなでただけでも箱鳴りがかなり変わったのを感じます。
これはシビアなギターですね。
( ̄~ ̄;)ウーン・・・
私もかなり時間がかかりました。
ロングサドルを標準で採用しないところがまたコリングスの好きなところです。
ロングサドルはメリットとデメリットとどっちが多いのか微妙な気がします。
まずサドルはロングだと作りにくいです。材料費もかかりますし。
ロングだとブリッジの強度が落ちる気もします。
サドルが倒れるのを防ぐためにサドル下を接着する必要があるとすればこれは音に悪影響です。
ショートサドルの方が作りやすいし,ボンドが要らないし,ブリッジ強度も高いでしょうし,材料費も安いのでメリットが多いと私は思うのですが。
(≧∇≦)b なるほどっ!
コリングスの真価を発揮するには,調整をする必要がありますが,わずかにいじってもすべてが音になってわかるとはビル・コリングス恐るべし。
「(≧ロ≦) アイヤー
コリングスやラリヴィーのカナダ時代のC10などもそうですが,ナット下の瞬間接着剤はどうやっても音に出てしまいます。
未接着の状態の音を知ってから,瞬間接着剤を最後にホンのわずかに使って取り付けても,その部分の弦の振動が変わります。
ダメ! (T∇T )( T∇T) ダメ!
耳が良くなりすぎたというよりも,きわめてレスポンスのいいギターを調整で煮詰めて行くとそこまでわかるようになってしまいます。
新品のギターだとまだ鳴りもそこまでではないでしょうし。
もっとはっきりわからない鈍いギター(失礼)はボンドが入っても幸せでいられるのに・・・。
では,どうしましょう。
いい方法があります。
(  ̄O ̄)ホー
タイトボンドです。
Martinも最近は標準でタイトボンドだと思います。
でも,タイトボンドも厚くナットと木材の間に層になれば,音が変わります。
それで,良い方法をあるリペアマンから教えてもらいました。
タイトボンドを水と1:1で薄めます。
粘り具合がとても薄くて良くなります。
ナットはもちろんジャストフィットに作りますよ。
薄めたタイトボンドをナットの下に入れて,ナットを左右に動かして,余分をはみ出させます。
こうしてうすーく使うと本当に気になりません。
これはいい方法です。
はずす際は,スポイトで水を少ししみこませてから叩くと良いようです。
はずす方はまだ試していません。
(^∧^) スミマセンです。
これまで,長年音詰まりや,音の曇りに悩まされてきましたが,ついに曇りが晴れるようなイノセントスカイのようなサウンドが達成されそうですね。
音詰まりのないサウンドは薄めたタイトボンドですね。
ナットの底面に溝がないようなL型に接着するタイプのナットはこういう時に困りますね。
o(ToT)o ダー
実は別の生徒さんも,コリングスのOM-2Hを持っています。
92か93年頃に製造のいわゆる3桁コリングスです。
そのサウンドはすごいです。
それを聞いて秋田のギター教室にもコリングスブームがやって来たのですが,それはすでにビンテージサウンドが出始めているのです。
その後たしか95年頃から4桁になっていくわけですが,3桁頃のものは15年経っていて,そろそろビンテージサウンドが出始めているのです。しかも,工房として小さい頃の方が作りがいいと言われています。
下の写真がそのOM-2Hですが,トップの艶を見てみてください。
蛍光灯が写り込まなくなります。木目に塗装が吸われています。
いわゆる塗装がすでにひいている状態ですね,。
これを弾いているのは わたなべゆう です。
彼もこの音の良さを感じていました。
割りに新しい,ハカランダのOM-2Hと比較してもこっちがいいと言っていました。
そうなんです。
ビンテージのサウンドが出始めると,新しくて高いギターでも太刀打ちできない魅力があるんです。
ビンテージのサウンドが出てくると,細かい調整では太刀打ちできないサウンドになるんです。
このギターも調整はそれほどすごいわけではありません。
私のOM-2Hと比べると明らかに軽いんです。
塗装も木も枯れているというか,乾いているというか,同じギターなのにこの軽さの違いは何だろうと思います。
生徒さんには,「いつでも買い取ってあげるよ。」と言っているのですが,「先生がそれほど言うならこれは絶対に手放してはいけないギターなんですね。」と言っています。
ププッ ( ̄m ̄*)
あと5年辛抱すれば,4桁コリングスも15年位になりますが,同じような音が出るでしょうか。
それとも3桁時代には長期間かけて乾燥したいい材料を使っていたのでしょうか。
なぞです。
うちのコリングスは今後どう成長するのか見守って行きたいと思っています。
こういうビンテージサウンドを将来出してくれるギターかどうかという要素を加えると,ギター選びの方法が変わりますね。
一般的にビンテージとして取引されているギターには,Martin,Gibson,GUILDなどがありますね。
テイラー,ラリヴィー,フォルヒ,ボジョアーなどはポリウレタン系塗料だったり,UV硬化塗料だったりしますね。
日本製でもラッカーにこだわるギターと,そうでないメーカーとがありますね。ラッカーの方が少ないかも。
もしくは,高級機種はラッカーで,量産品はウレタン系とかもありますね。
マーチンもそうだと思います。
将来ビンテージになるギターを買うか,今道具として使いやすいギターを買うか。
これも選択肢の分かれ目の一つですね。
将来ビンテージになり得るギター。
コリングスは昔,雑誌の宣伝コピーにこうありました。(たしか)
「20年後を見据えて作られたギター」
本当なのかもしれませんね。
(ノ^_^) ハイ!
2007/6/29 追記
コリングスの塗装について情報がありました。以前からオールラッカーではなく,ネックなどはウレタン系だということでした。
でもラッカーは手の汗などで変質して,ネチャネチャと溶けるような場合もありますので,音に大きく影響しないならネックがウレタン系というのは正しいような気もします。
でも,最近はトップもラッカーではなくなっているのです。
「(≧ロ≦) アイヤー
年数を言って代理店のトーラスに確認するとラッカーかどうかは教えてくれますが,私のはラッカーでした。
2000年ごろが分かれ目でしょうか。
UV塗装を下地に最初塗ってからラッカーをかぶせるというような話も聞いたことがあります。
しかも,それは音質を考慮してそうしているということだったので,ハカランダ信仰に近いものとして,ラッカー信仰みたいなものをもつよりも,塗装が薄いか,音がいいかで判断すればいいように思いますね。
ラッカーでなければビンテージ風のサウンドが出ないというわけではなく,トップとの一体化にオールラッカーより少し時間がかかるのかなと思ったりしています。
いずれにしても,昔のコリングスと今のコリングスとはちょっと違いがあるということですね。
最初に出てきた一生モノのギターを探すの多くの店主の結論はビンテージともうひとつあります。
それは手工品ですね。
手工品の世界はまたいつか。
つづく。
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