ヤマハのL-8 80’sジャパニーズビンテージを調整してみました。 スキャロップとノンスキャロップの違いを少し参考までに。
誰しもギターにただ単なる音質以上のものというか,憧れみたいな記憶を重ねる事は良くあることです。
実は,私がギターをはじめた頃はフォークブームの後半で,長渕,松山,アルフィー(フォークからロックへ移行しつつあった),チャゲアス,さだまさし,などなどの時代でした。
その頃,なぜか多くのプロがヤマハのギターを使っていたのです。
ポール・サイモンがヤマハを使っていたりするのも興味深いですよね。
特にさださんはその中でもヤマハ党とも言える方でした。
そして,ついに120万のシグネイチャーまで出るのでした。
20才ころ私もあるギター教室へ見学に行って,「サンダー菊池」先生と出会いましたが,彼が弾くヤマハのL-10の音を聞いてスゴイ音量で,箱鳴り,倍音などに感動した印象が強いのです。
サンダー先生のタッチが強いのと,私がその頃エレアコ人生だったので,余計にそう感じたんだと思います。
ちなみにサンダー先生は東京時代に,ヤマハの講師で,石川鷹彦がリードギター課の時に自分はサイドギター課で教えていたと語っておられました。
結局サンダー先生には習わなかったのですが,サンダー先生の1時間のFMラジオ番組に出演することになり,演奏時間が純粋に30分必要といわれ,当時のすべてのレパートリーを合わせても時間ギリギリで大変でした。
その録音テープを今聞くと鳥肌が立ちますが,生放送で,県内に自分の演奏が流れているというのは興味深い体験でした。
若かりし日にいろんなことに挑戦したのが今は良かったと思っています。
(ノ^_^) ハイ!
話を戻すと,その時代にはMartinは夢の楽器で,ヤマハのギターというのがなんとなくいいギターのスタンダードな印象があったのです。
しかし,いろいろギターを知るようになってからヤマハのギターを弾くと,それほどスゴイと思えないこともありました。
ヤマハの30万以上のギターを弾いても,すごくいい音というよりも,無難な音という感じの印象を持つこともありました。
「ヤマハの新しいLシリーズの高級器を弾きましたが,ヤマハのギターをどう思いますか。」という質問を頂くこともあります。
私的にはソロギターよりも,弾き語りに向いているサウンドだと思っています。
でも,音質が好みかどうかという問題よりも,実はヤマハのLシリーズはある部分に特徴があります。
それは,ノンスキャロップということです。
これはブレイシング(力木)を削るかどうかということです。
これはボジョアギターで,Xブレイスの向かって左側が1弦側になりますが,このブレイスはノンスキャロップです。
それに対して,向かって右側の6弦側はスキャロップになっています。
低音を豊かに鳴らして,高音は芯がある音を狙っているのでしょう。
これはかなり特殊な例ですね。
Martinで考えてみますと,ノーマルのD-28はノンスキャロップです。でも,鳴りがいいなと多くの人が感じるHD-28Vなどのビンテージシリーズはスキャロップになります。
クラプトンモデルもビンテージシリーズです。
ブレイスを削ると強度は下がります。でも鳴りは上がります。
ところが,あえてノンスキャロップを選ぶメーカーも,ユーザーもいるんです。
ラリヴィーは実はノンスキャロップです。
ヘッドウェイにもノンスキャロップが多くありました。(最近は少しスキャロップです。)
そして,ヤマハのLシリーズもノンスキャロップなのです。
どういう音質の違いがあるのでしょうか。
構造の違いなので,一言でどっちがいいとかは言えないのですが,普通はビンテージシリーズの鳴りの良さに惹かれるものがあるかもしれません。
ところが,いろいろやっていくとノンスキャロップの良さもまた知るのです。
私の私的な感想ですが,ノンスキャロップのギターの方が録音した時にキレイに録音できる感じがします。
遠鳴りするというか,弦の輪郭をはっきりと伝えられる気がします。
この辺がヤマハのギターの秘密かもしれません。
アマチュアでもレコーディングでいい音になるかも。
スキャロップのギターは録音の仕方にもよりますが,甘い音になる可能性もあります。
ピックアップサウンドにも違いが生じます。
ノンスキャロップの方が,箱鳴りが多く鳴りすぎず,タイトで芯がある音をコンタクトで拾えます。
箱が鳴り過ぎないので,箱を叩いてもコンッと音の切れ味が良かったりします。
スキャロップの場合は箱鳴りが多いので,コンタクトでは鳴らない位置を探して付ける事になります。
スキャロップ特有のコーンという感じの箱鳴りが残ります。
これが,少し気になるという方にはノンスキャロップという選択肢もいいと思います。
でも,生音で弾いていて楽しいのは,一般に箱鳴りが多いスキャロップのギターで,箱が鳴っている方が気持ちが良く,演奏者自身もノッテきます。
音にもリバーブ感がともなってきますし。
ラインの音や録音していい音になるのがいいか,演奏者が楽しいのがいいか。
( ̄~ ̄;)ウーン・・・悩みます。
普通は自分で録音してもリバーブをかけます。
そうすると,ギター本体からリバーブが余りに出過ぎないタイプのノンスキャロップの方がすっきりと聞きやすい場合もあります。
私が以前に録音した幻のアルバムでは,ラリヴィーを使いました。
このCDの録音がいいというので今でも欲しい人が時々います。
そんな思いがあって,ヤマハのL-8を入手して,ノンスキャロップの音の魅力というか,そのあたりを確かめてみようと思ったのでした。
25年ものになればビンテージかもしれませんし,どんな音がするでしょうか。でも,当然ながら標準で付いてくるパーツの交換から始まりますね。
80年代前半の物で,日本製のようです。L-8はオール単板のものとサイドが合板のものがあります。
これはサイド合板の時代ですね。
見分け方は,エンドピンの切り口を見るか,サイドの割れ止めを確認すればいいと思います。 (木目が表裏一致しているので・・・というコメントはあてに出来ませんね)
この時代は8万のギターでもいいエボニーを使っていたんですね。ブリッジはなんちゃってエボニーですが。
(T_T) ウルウル
ナットがプラスティックな感じですので,タスクに交換します。
そして,ヤマハの弦の感覚は狭いので広げます。
ギターオタクの友,スチュアート・マクドナルドのナットルーラーを買ってしまいました。 ナットのE to Eスペーシングはこれでかなり楽になります。
中心を合わせるのです。
上のナットがヤマハに付いてきたものです。
新しく作ったのは下のナットです。少し広い弦間になります。
1弦端から4.2ミリで,6弦は端から2.5ミリです。
これが私のギターの特徴です。
44ミリも45ミリも両端からの距離は上記の通りにします。
43ミリのナットの場合にはE to Eが狭くなりすぎますので,1弦の端から3.5ミリくらいにします。 Martinの1弦はプリングで弦落ちしますよね。
ナット下がギターの命ですね。
光にかざしても漏れがないようにぴったりになるまで調整します。
サドルも作り直します。 以前に別のL-6を見た時にもそうでしたが,サドルの下に瞬間接着剤のようなものが入っているのです。 それを取る作業から始まります。
これはやめて欲しいですよね。
ププッ ( ̄m ̄*)
サドルはカシッと入るように作ります。
本当にシビアな作業ですね。
この時代のL-8はサドル溝が深くないので,インブリッジピエゾをそのまま入れるのは少し苦しいと思います。
ベストな取り付けは溝を掘りなおさないとだめかも。 この辺の構造に関係なく,ピックアップ取り付けができるのは,ニコピンの優れたメリットですね。
見えにくいですが,調律サドルになっています。
弦が出てくるところのノッチという弦通しガイドが音の芯を生み出します。
音が前に出てくるようになります。
ありとなしの差はナット下の処理と同じくらい違います。
ナット,サドル,ノッチは調整の基本でしょうね。
弦が溝に埋まらないように仕上がりました。
80年代前半のギターですから,試奏も昔のフォークで行きましょう。
(≧∇≦)b OK!
ストロークで行ってみましょう。
終わり方がトミーのあれ風で笑えると生徒から言われます。
間奏ではピック一枚で,メロディーとストロークと叩きのリズムの3つを同時に演奏しています。
押尾的なネイルアタックとは違ってピックのストロークでリズムを出す方が迫力があると思っています。
どうでしょう。
R-1でそのまま録音しただけの音です。
ノンスキャロップは録音した時にバランスがいいような気がします。
ビンテージになり得るかどうかは個体差がありますね。
これはちょっとギターがキレイ過ぎるかも。
25年物のギターで,傷は探さないとないくらいです。
やはり,弾き込まれて25年経ったらビンテージですね。
そういう意味ではもう少し弾きこみが必要かもしれません。
ヤマハのギターはどうですかという質問にはこう答えます。
「ノンスキャロップのギターは鳴りが出るまで時間がかかります。
それで,店頭に並んでいる時はまだ本来の音ではないと思います。鳴りが出るまで,1年はかかるかもしれません。
さだまさしさんも雑誌のインターヴューで,LL-120MSはまだまだステージでは使えないと言っていました。」
(⌒^⌒)b なるほど
その楽器,その楽器に自分を合わせて演奏するのが一番ですね。
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