バックセンターラインの意味

ギターによってバックにセンターラインがあるものとないものがあります。マーチンは結構センターストリップが入っています。Ayersではマホガニー,メイプル,インディアンローズの通常モデルにはありませんが,もっと硬いベトナムローズやマダガスカルローズ,ココボロでは入れるようにお勧めしています。


その理由について説明いたします。ギターの塗装は数年で「塗装が引く」という現象が現れます。「引きが出ている」という表現も使います。


これはどういう現象かと言いますと,新品の時に木材の上に塗装が乗っていわば塗膜が層になっているのですが,時間と共に塗料が木材に染み込んで行き一体化する現象なのです。


それで,20年も経ったギターのトップを見ると新品のツヤとは違う少し艶消しとも違う,艶出しなのに塗装が薄くなったような印象になります。


ラッカーだとこれがさらに顕著になります。PU(ポリウレタン)でも年数で次第に引いていくことは変わりません。この塗装が引いて来た時にセンターラインの継ぎ目で左右の差が出る場合があるのです。写真で見てみましょう。


5A フレイム・メイプルいわゆる虎目のジャーマン・メイプルです。ティー・ブラウンというカラーを入れております。白いメイプルよりもさらに虎目が強調されるので,インパクトがあります。

ちなみに5Aの基準は端から端まで虎目が入る事としています。なので,一部端まで見えないものは4Aもしくは3Aと虎目が入っていても下がって行きます。


これが4年経つとどうなるか?




元々一枚の板をブックマッチという方法で本が開くように左右に開いて使うので,右と左の木目は対照になるわけです。


これがフレイム・メイプルの場合は木材が痩せる方向が左右で異なるようになるわけです。一般にマホガニー,虎目のない通常のメイプル,柾目のインディアンローズではここまで左右の違いが出ません。なのでセンターラインは無しでも良いという判断になることが多いと思います。


しかし,板目で使う木材やフレイム・メイプルのように左右の違いが出る場合には木材の痩せる方向が左右で異なり,センターラインに凸凹が生じる得るのです。動画で見てみましょう。


このくらいは味わいであると見るか? 新品の時は気が付かないものですが,数年後にここがハッキリと出てくるようであれば最初からセンターラインを入れるか? これは製作者の考え方になります。


そもそも,フレイム・メイプルとかバーズアイ・メイプルは一種の奇形であるという説があります。角度によって波のように見える木目はやはり特別なものです。フレイム・メイプルの密度は不均一だと思われます。


再塗装のためにバックが少し薄くなり,なおかつ暗い部屋で後ろから強い光を当てるとこのように見えます。つまり,フレイム部分で木材の密度が異なるのだと思います。

私が作ったギターで判断するなら,フレイム・メイプルの方が音が良いのです。

同じインゲルマンのトップでもフレイム・メイプルの方が音が良いと感じるのです。


なぜか理由がハッキリわかりませんが,私の推測ではこの木材の密度が不均一というのが良いのではないかと思うのです。均一に整っていないためにより複雑な音の反射が起こるのではないか?と一杯飲みながら考えるのは楽しい時間なのです。


というわけで,板目で使う高級ギター材,特に密度が高いものは数年後にこの左右の塗装の引きが違ってくるという現象が起こるため,バックセンターラインを入れる方が良いのです。


入れ方としては数通りあります。


1 バインディングと同じ素材で入れる

 例えば5A KOAのバインディングならそれをセンターラインに入れるとさらに美しいです。



2 パーフリングと合わせる

 バックにアバロンのパーフリングが入っている場合にセンターラインもアバロンであればそれも統一感がアップします。




3 マーチンなどのように既製品のモザイク・ストリップを使う

 マーチン風にしたい場合にはこれも選択肢の一つです。手工風にしたい場合はやはり木材やアバロンがいいかもしれません。



4 目立たない素材で入っているかどうかわからないように入れる

 これはバックがマダガスカルなのですが,マダガスカルには色が浅いものがあります。音が軽いわけではありません。その浅い色とKOAはかなり近い色になりますので,パーフリングなしにすると一体化するようなイメージがあります。


パーフリングであえて差を強調するか?目立たないように入れるか?これもオーダーギターの面白さの一つですね。



このようにカスタム・ギターは考えるべきパーツが結構あり,ひと目見て美しいと感じるデザインのギターは偶然というよりも緻密に計算されバランスが取れたデザインである事が多いのです。


こういう色の合わせのセンスなどはSUMIギターの鷲見さんのギターから学びました。「ちょっと色を入れておきました。」という風にトップ,バインディング,サイドの色合いの繋がりまでも計算して色を少し足しても美しいギターに仕上げるというセンスは素晴らしいです。


Ayersは出来るだけクリアーを使い素材の色合いを合わせる方向でやっています。












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